叔父に家を追い出された僕が異世界から来た猫と出会い、ダンジョン配信でバズ狙いすることになった件。ちなみに元アイドルで美少女探索者の従姉妹は僕にべた惚れです
175.5 猫と美少女たちは何気に仲良し(11)(前)
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Side:パイセン
「いい感じじゃない?」
「ああ。ここまで仕上がれば十分だ」
はあ、はあ、はあ……膝に手を突いて休む私に、みおりんとさんご君が言った。
今日は市営グラウンドでトレーニングで、目的は、異世界でさんご君に生やしてもらった新スキルの慣熟だ。
身体強化も使ってるから体力的には問題ないのだけど、新スキルを絶えず使う精神的疲労が大きく、はあはあはあ……私の息が荒いのはそのせいだった。
「『
『
異世界でスキルを生やしてもらえることになった時『パイセンには
「はあ、はあ……もうちょっと、走って来ます」
トラックに戻って、私は走り出す。
走り始めて、まだスピードは遅くても、空気の抵抗は確かにある。
それを――
「『
新スキルで、推力に変える。
殴ったり蹴ったりするのと同じように、空気抵抗もまた、自分にぶつけられる一種の攻撃だ。『
当然、スピードが上がれば空気抵抗も増す。
「『
増加した空気抵抗=攻撃をまた自分の背中に移動してぶつければスピードは更に増し、更に当然、空気抵抗も増大し、変換される推力も更に更に大きく
なり――
「『
スピードは、雪だるま式の加速で、終わりなき上昇を続けていく。
もっとも当然だが、限界はある。
『
まだ未熟な私の『
だから、そこへ――
「『
振り上げる手足にかかる空気抵抗も、背中に移動して推力に変える。
「『
いま時速何キロなんだろうなんて考える余裕もなくなってたわけだが、でも不思議と、周囲の景色に対する注意は増していた。
市営グラウンドの近くに建つビルの窓辺で、何人もの人がこちらを指さして話していた。
空気が、やけに汚れていた。くすんでいるというか、煙めいた細かな何かが煙みたいに舞っていて、中には指でつまめそうなくらいの大きさの塊すらある。
そんな状態でトラックを何周かして、ようやく気付いた。
空気に淀んでるそれが、土塊なのだと。
私のスピードに巻き上げられたり、あるいは靴底で踏み削られた土が粒子となって舞い、私を追いかけるような土煙が巨大なドーナツ状の姿をトラックに現してるのだと。
「パイセン! 止まって! 靴! 靴!」
珍しく慌てた風なみおりんの声に、こっちも慌てて見て見ると、靴が燃えていた。
地面との摩擦で、そうなってしまったのか――
「ふわっ! ふわわわわっ!」
土煙――舞い上がった微細な粒子に、火。オタクの基礎知識であるところの粉塵爆発を連想して、私は慌てて靴を脱いで放り投げた。
幸い、粉塵爆発は起こらなかったのだが、この騒ぎに気付いた市営グラウンドの管理人や、市役所の人にお小言を言われてしまった。
それから、見物していた近所のビルの人達もやってきて(ちょうど、昼休みに入ったところだったらしい)、私達のトレーニングは終了せざるをえなくなってしまった。
「まあ、元々あれくらいの時間に終わる予定だったんだけどね~」
とは、みおりんの弁だ。
それから私達は市役所の食堂(魚市場から歩いて5分の場所にあって、お寿司定食が美味しいと評判――確かに美味しかった)で昼食をとり、駅ビルのスパで汗を流した後、タクシーで彩ちゃん宅に向かった。
「おう、来たか~。彩もいま仕事終わったってよ」
「いえ、まだ終わってないんですけど……あっちでやります」
というわけで、彩ちゃんはノートPC持参で、異世界に飛んだ。
彩ちゃんのお父さんが出してくれた異世界へのゲートを潜ると。
「彩様ああ! みおりん様あああ! パイセン様ああああ! お待ちしておりましたぞおおおおおお!!」
ガ=ナールさんの平伏で出迎えられた。
これから私達は、
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