166.猫と異世界で祝勝会(後)
「いや~。まさかこんなに早く結婚できるとは思いませんでしたよ~。前にさんご君が言ってた『抜け道』ってこのことだったんですか~?」
「そうだよ。いざとなったら3人まとめて
「『お前は異世界の王になるのだ』なんていきなり言われてどうなることかと思いましたけど、異世界さまさまっていうか『人間万事塞翁が丙午』ってこういうことをいうんですかね~」
姿を隠すことをやめて、でもダンジョンブレイク擬きが収まった後の大騒ぎで『猫神トレンタ』と気付かれることもないさんごと機嫌良く会話しながら、彩ちゃんは杯を重ねている。
異世界では13歳で成人だそうで、僕も飲んでるけど、異世界のお酒は、どぶろくをワインで割ったような、乱暴だけどそんなに悪くもない気もする味だった。
(こういうお酒を飲むと……祖父ちゃんのこと、思い出しちゃうな)
(晩酌で祖父ちゃんが飲んでたのも、こういう味だったな。米ベースでちょっと酸味と渋みのある……そういえばあれは、なんていう酒だったんだろう?)
(ラベルの無い瓶に入ってて……そうだ。『源三にもらった』って、祖父ちゃんは言ってた)
源三さんは、僕が住んでる山の、街とは反対側にある村の住人だ。祖父ちゃんはそこの村の人と仲が良くて、連れられて遊びに行ってた僕も、村の人達とは顔なじみだった。
(祖父ちゃんも……異世界人だったんだよね)
お酒の味から祖父ちゃんのことを思い出してたら、異世界での祖父ちゃんの名前――『バルダ・コザ』も浮かんできた。
最初にその名前を聞いたのは、いつだったろう?
(あの……3人組)
一ノ瀬さんと行動を共にしている3人組の美少女。彼女たちも異世界人で、会話してたらさんごから『バルダ・コザ』『バルダ・ミッツァ』といった名前が出て来たのだった。
『バルダ・コザ』が祖父ちゃんで『バルダ・ミッツァ』が父さん――そういえば。
(祖父ちゃんと父さんも、異世界の王様だったんだ)
さんごによれば、祖父ちゃんは200年くらい前に異世界から僕らの世界に渡ったという話だ。父さんが王様をやってたのはその後に違いなく……
(だったら……さんごは、どうやってそんな情報を?)
さんごが宇宙の旅に出たのは400年前と聞いたことがある。では、その後に王様をやってた祖父ちゃんや父さん、そして祖父ちゃんが世界を渡った200年前のことを、どうしてさんごが知っているんだ?
「ねえ、さんご――」
横でソーセージを食べてる、さんごに聞いてみると。
「そのうち分かるよ。それと君の祖父や父親が異世界で何をやってたかは、
さんごのいう
「お~い、ぴかりん~。飲んでるか~?」
彩ちゃんのお父さんは、
(あれ……200年前?)
祖父ちゃんが世界を渡ったのが200年前なら、彩ちゃんのお父さんは、その頃から生きていることになる。お父さんの外見は40代半ばといったところで、200歳以上だとはとても思えなかった。
と、疑問は――聞きたいことはいくらでもあったのだけど。
「彩~。結婚するんだな~。おまえ結婚するんだな~」
「ちょっとあっち行って。恥ずかしい」
彩ちゃんにつれなくされるお父さんは明らかに泥酔していて、ちゃんとした話なんで出来そうになかった。
それから30分ほどで、僕らは自分たちの世界に戻った。
●
そしていま、僕は彩ちゃんとベッドにいる。
もちろん、エッチなことはしていない。
でも、僕の腕には彩ちゃんの頭が乗っていて、顔と顔は10センチも離れていなかった。
「お父さんのせいで『結婚するまで誰ともしない』って思ってたんですけど……はっきり言って毒親ムーブの犠牲者なわけですけど……でも、そうしてくれて良かったとも思ってるんですよ」
「良かった?」
「はい……あの、私って……光君も気付いてるかもしれないんですけど……」
「?」
「性欲、強いんですよ。めっちゃ凄いんです。先に言っておきますけど、私、初めてではあるんですけど、多分……ですね。初めてする時に、その……いわゆる処女っぽい反応って、出来ないというか……なんというか……その……自分で、してたというか……してるので。めっちゃしてるので」
「そうなんだ……」
「そんな私が、大学の体育会系の寮なんてあんなところで自由に……その、してたらですね。それはもう、なんというか……とんでもないことになってたと思うんですよ」
「…………」
「だから――『塞翁が丙午』じゃないですけど、これはこれで良かったのかなあと……光君に、初めてをあげられるわけですし……光君みたいな素敵な人と、結婚できることになったわけですし……んん?」
「あの。僕も、性欲強い……みたい」
彩ちゃんは足を僕の足に乗せていて、彩ちゃんの片方の膝が僕の太ももに乗るような体勢になっていて、その彩ちゃんの膝に僕のとある部分が触れていて――触れるほどに大きくなっていて。
「へ~え。ちゅ」
軽くキスすると、彩ちゃんは、顔を熱くする僕を見ながら、笑って、膝でぐりぐりし始めた――僕の、とある部分を。
「あ、あの……確かに……処女っぽくないんですけど、その……」
「最後の一線は、結婚式までとっておきましょうね?」
そう言うと彩ちゃんはタオルケットに潜り込み、それから、それから……とても、気持ちよかったです。
そしてそんな僕達を、どらみんが楽しげに、目を輝かせて眺めていたのだった。
「きゅぅ~う♪」
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