164.猫と彼女の新スキル(後)
中層になるとモンスターの強さも増し。
『『『びぎゅも~、ぶも~、びぎゅも~』』』
上層では単体でしか出てこなかったミノタウロスが、群れで襲ってくるようになった。
だけど、僕らの敵ではない。
まずは彩ちゃんが。
「
一撃で全頭の顔面に打撃を喰らわし、即死はしなかったけど脳震盪でふらふらしているところへ。
「『
僕が、雷の弾丸を連射して仕留めた。
ここ数日でものにした『結界』で内臓を傷つける攻撃でもよかったけど、見た目優先で『
ウ=ナールに、僕の強さを分からせるためだ。
実際、効果があったみたいで――
「…………」
ウ=ナールは、例の
「こうなると、一撃の強さを上げたくなってきますね」
と、彩ちゃん。
確かに、一撃の強さが上がれば、分割された攻撃の威力も上がることになる。
さんご:『
さんご:魔力の使い方を、ちょっと変えるだけでいい
さんご:攻撃する直前に、体内の魔力の流れが速くなって一瞬で身体を何周もするようなイメージを思い浮かべるんだ。
さんご:そのイメージと打撃がインパクトする瞬間がうまく重なれば、攻撃の威力が何倍にもなる
彩:いいですね。早速やってみます
光:それって僕にもできる?
さんご:光はやめておいた方がいい。もともとの魔力の流れが速いから、それにブーストがかかるとスキルが崩壊して、単なる魔力の放出と変わらなくなる
光:そうなんだ……
さんご:ところで魔力酔いはしてない?
さんご:今日は、タイフーンユニットを使わずに魔力を吸収しているけど
光:それは大丈夫。異世界の魔力は濃いけど、雑味が少ない感じで……僕自身の耐性もあがってるのかな。魔力酔いは、ぜんぜん感じない
僕には近くにある魔力を吸収するスキルがあるけど、魔力には『雑味』と呼ばれる成分が含まれていて、あまり吸収しすぎると脳疲労で倒れたりしてしまう――それが魔力酔いで、いつもは『雑味』を濾過する『タイフーンユニット』という魔導具を使っている。
でもさんごにも言った通り、最近は耐性がついたのか魔力酔いになることもないし、異世界の魔力は『雑味』が少ないのか、どれだけ吸収しても魔力酔いする気配すらなかった。
●
ところで、今回ジョウエンダンジョンが大変なことになっているのは、深層の
そんなわけで、中層を探索すれば当然でくわすことになる――
『『『『『ぎぎぎげぎゃぎゃぎゅぎ、ぎぎぎげぎゃぎゃぎぇぎょ、ぎぎぎげぎゃぎゃぎゅぎ、ぎぎぎげぎゃぎゃぎぇぎょ、ぎぎぎげぎゃぎゃぎゅぎ、ぎぎぎげぎゃぎゃぎぇぎょ』』』』』
それまで洞窟状だった景色が急に開けたと思ったら、向かい合った崖を埋め尽くすように、猿の大群がいた。
数は、ゆうに100を超えるだろう。もしくは数百にも及ぶと表現した方がよかったかもしれない。
猿9崖1――崖の9割が猿で埋め尽くされ、崖の地肌は1割も見えない。蠢く猿たちの描く模様は
「「「「「おえ”~~~っ!!」」」」」
僕らの背後からは、吐き気を催した者達の嘔吐く声が渦巻いていた。
猿たちも、僕らに気付いたらしい。
「結界!」
僕が叫んだ次の瞬間には、ドーム状に張った結界に猿たちが飛びついていた。
『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』『ぎょげ』
ドーム状の結界に張り付き、ドーム状の肉壁となった猿達が僕らを見る目、目、目。結界をひっかく爪、爪、爪……
「「「「「おえ”~っげろげろげろ!!」」」」」
背後で嘔吐く声には、早くも嘔吐までたどり着く音が混ざり始めていた。
しかし、おぞましい光景ではあっても、彩ちゃんの『
「彩ちゃん、魔力は大丈夫?」
「はいっ! いけますよ~。割たれし槌げ~んん!?」
彩ちゃんが、メイスを振り上げ――止まった。
さんご:待って!
さんごが、制止したからだった。
さんご:光、タイフーンユニットを着けるんだ。ジョーカーユニットも起動して! それで、作ってほしいものがある
さんご:あの猿どもから奪った魔力で
さんご:彩の、新しい武器を作るんだ!
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