161.猫と彼女と異世界へ(前)

アンケートとってます。

期間は1月13日までです。

よろしくお願いします。


https://twitter.com/oujizakuri/status/1743809849182593360

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「ちょっとさ、探索してくんないかな?」


 探索?

 いまこの時間に、どこで?

 というかそれ以前に、どうして?


「ま、ちょっと1階したで話すか」


 ということでリビングへ。


 リビングにはお母さんもいて、さっきとは違う、というか明らかにこの世界のものではない服装になっていた。


 お父さんが言った。


「異世界に行って、こっちに戻って、それから後なんだけど、色々あって。あっちとこっちを行ったり来たり出来るようになったんだよ。ま、それからも色々あったんだけどさあ」


 つまり、世界間の移動が可能になったということか。


「それでお母さんこいつは、あっちの世界の王様の娘だったんだけどお……」


 お姫様ですね。


「魔王を倒したご褒美で結婚することになってさ、こっちに戻るときにも連れてきたんだよ。でも、あっちとこっちを行ったり来たり出来るようになって、色々あって、あっちにいるこいつの親父さんにさあ……」


 王様ですね。


「あっちの親父さんに彩を見せたりしてたら……跡目争い? の抗争? とかでさ。色々あってさあ」


 王位継承権の争いですね。


「あいつら彩のこと殺そうとしてきたから俺も頭にきてさ。色々あってさあ。彩が次の王様になることになっちゃったんだよ」


 お父さん、色々ありすぎますよ……って、ええええ!?


「前の王様も死んじゃって、彩が独立するまではってことで、いまは俺が代わりに王様やってるんだけどさあ……彩を誰と結婚させるんだってみんな煩くてさあ……」


 まあ、次の王様の王配になるわけですからね。


「それで、彩がぴかりん君と付き合うっていうから、それ、異世界の奴らにも言ったんだ。そしたら連れてこいって……彩の旦那になってもいいくらい強いのか見せてみろって言われちゃってさあ」


 あの……彩ちゃんと僕が付き合うことになったのは日曜日で、今日はまだ水曜日なんですけど……


「それでさ、これから異世界に行って、あっちのダンジョン攻略してさ、あっちの奴らにぴかりん君の強さを見せてやってくんねぇかなぁ」


 うーん。


 断る理由が見付からない。あまりに話が突然で突拍子もなさすぎて、どこからどういう理由で断ったらいいか見当がつかなかった。喩えるなら、一升もある炒飯と白米とターメリックライスの山にカレーとシチューと中華餡をかけて更にトンカツとエビフライと牡蠣フライとハンバーグとシュウマイと厚切りチャーシューと豚の角煮を乗せた料理を前に、どこから手をつけたらいいた分からなくなるような感じといったところだろうか。


「あっちにいた時間は、こっちじゃノーカンだから。バイトとか予定があっても大丈夫だし、心配しなくていいよ」


 異世界で何時間過ごしても、こちらの世界では時間が流れていない――転移した時刻にそのまま戻れるということか。だったらお父さんの言う通り、どれだけ時間がかかっても予定――明日の補習には支障がないということになる。


 まいった……断る理由が見付からない。


(というか……どうして、断らなきゃならないんだろう?)


 最初から断る理由を探してたけど――そもそも異世界で探索するメリットもデメリットも何も考えてなかった。断った方が良いのか悪いのかも。


 ただ、厄介ごとの匂いだけはぷんぷんしてるわけだけど。


 でも、そんなの考えようにも――そうだ。


「ちょっと、人を呼んでいいですか?」


 一言ことわって、メッセージを飛ばした。


 光:いますぐ来てくれる? 彩ちゃんち

 さんご:分かった


 2秒で、さんごが来た。


 テーブルの上に現れると、リビングを見回し、2本足で立って、さんごは言った。


「なるほど、そういうことか」



 テーブルに現れたさんごに――


「マジか」


 とお父さんが笑い、


「トレンタ様……」


 とお母さんが涙ぐむ。


 さんごは異世界で、伝説の猫神『トレンタ』として奉られているのだ。


「偉大なる……ううっ。空に……うっ。輝く……ううううっ。ペッキオ山の……うっ。星にして…………おえっ」


 嗚咽して、緊張でちょっと吐きそうになったりしながら、お母さんはさんごを称える言葉を言おうとしてるのだけど、さんごはそういう反応には慣れてるらしく、無視して言った。


「彩のバックグラウンドの調査が進んでないとは思ってたけど……そういうことだったとはねえ? 彩ちゃんのお父さんそこの勇者にかかってる制約が、邪魔してたってことか」


「おお、そうか。いろいろかかってて、俺もよくわかんねえんだよ」


 お母さんと違って、お父さんにはさんごを敬う気持ちはないみたいだった。


「それから、彩ちゃんのお母さんそっちの女は――『冒険王』イーサンの末裔か」


「はい、トレンタ様。私はタラシーノ国の王『イーサン・ド・スケベーヌ17世』の娘モエーヌでございます。日本では洞口萌美と名乗っておりまして、ここにおります勇者龍吾との間に長女の彩を授かっております」


「なるほど……そうと分かって見れば、確かに彩には『建国の聖母セリア』の面影がある。それで? 僕がここに呼ばれた理由は? 話してごらんよ」


 それから僕が、異世界での探索を頼まれてることとその背景にある事情を話すと、さんごは言った。


「じゃあ行こうよ。僕と君で、異世界で探索しようじゃないか」


 そこへ、声がかかった。


「あの……それって、私も行ったらダメですかねえ?」

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お読みいただきありがとうございます。


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