159.猫が理想の家を提案しました(後)

アンケートとってます。

期間は1月13日までです。

よろしくお願いします。


https://twitter.com/oujizakuri/status/1743809849182593360

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 水曜日――どんどんどん!


「……おはよう」


 ノックされたドアを開けると、美織里が立ってた。


 でもさんごが言ってた通り、彩ちゃんとパイセンに遠慮してるのか、小屋には入ってこない。


 補習のため学校へ向かう道すがらも言葉少なで、頬を赤らめた顔は怒ったような表情だ。


 昨日、パイセンから話してはくれたんだけど――やっぱり僕からも、言わないわけにはいかないだろう。


「あの、昨日、パイセンと――」


「パイセンと?」


「……しちゃいました」


「知ってる――別に、怒ったりしてないから」


 だったら、どうしてそんな表情を――理由は、すぐに分かった。


「さっきも、パイセンと電話してたんだけど……パイセン、なんか変なテンションだった。それで……もしかしたら、光と初めてした・・後、あたしもこんな・・・だったのかなあって……」


 美織里と僕が、初めてした後――そういえば。


「あの、直後・・に――したすぐ後に動画撮ったよね……見る?」


「見た」


「……感想は?」


「『なんだこの浮かれたバカ女』はって――思って『いつものあたしはこんなじゃないはず』って、他の動画を観たら……」


「見たら?」


「あんまり変わらなかった――あたしって、普段からこんなだったんだなって……」


「……なんて言ったらいいか分からないよ」


 その後はしばらく無言で歩き、学校が見えた辺りで、ぽつりと聞かれた。


「彩ちゃんとはどうするの?」


 そうなのだ。


 僕は、美織里と一線を超えている。パイセンともだ。超えてないのは彩ちゃんとだけで、でも彩ちゃんは、結婚するまで誰とも最後までしないと言っている。


 でも今日、僕は彩ちゃんと会って、最後までじゃないところまでは、することになっている。そういう予定を組まれたのだ。僕の恋人達――美織里とパイセンと彩ちゃんによって。


「「「あ…………」」」


 校門の前に、彩ちゃんがいた。


 僕も美織里も彩ちゃんも、言葉を失ったかのように固まる。彩ちゃんは僕の恋人で、同時に僕が通う学校の教師でもある。


 どうしよう……悩んでる間に教室に着いて、補習が始まり、終わって、パイセンと待ち合わせしてる美織里と別れ、僕は僕で彩ちゃんと待ち合わせしてる場所に向かって――着いた。



 着いたのは、彩ちゃんの家の近くの公園だ。


 夏休みだけど、子供は少ない。老人もいない。いるのはスピーカーで大音量の音楽を流し、踊り、それを撮影する高校生のグループだけだった。


(みつかったら嫌だなあ……絶対からまれちゃうよねえ……)


 公園の隅のベンチで顔を伏せてたら、声がした。


「お待たせしました~」

「きゅ~~~」


 彩ちゃんとどらみんだ。


(不味い!)


 絶対、高校生にみつかって絡まれる!――と思ったら。


「「「「「「しぇっしぇっしぇっしぇーい!!」」」」」」


 奇声を上げると、彩ちゃんに向かって高校生達が頭を下げていて、それはもう膝と膝の間に頭が挟まるくらいの下げっぷりで……


「あー、いいですから。そういうのは」


 彩ちゃんが『しっしっ』と手を振れば。


「しぇしぇしぇしぇーい!」


 我先と逃げ出すように、高校生達は公園を出ていったのだった。


 彩ちゃんによると。


「私の中学の先輩か後輩か同級生の後輩なんじゃないですかね~」


 と、日本語能力を試すテストみたいな答えが返ってきた。さっきの高校生達は、明らかに彩ちゃんを恐れていたわけだけど、そんなぼんやりとした関係性で、あそこまで恐がられるものなのだろうか……


 謎は残ったままだったけど、とりあえず公園を出て、僕らは彩ちゃんの家へと向かった。



 彩ちゃんの家は、公園から5分も歩かない場所にある一軒家だった。作りは古そうだけど、外壁は綺麗に塗装されてて痛んでる様子はない。


 それにしてもだ。


「どらみん……大きくなりましたねえ」

「きゅー!」


 話には聞いてたけど、ちょっと見ない間に、どらみんは急成長していた。


 以前はスーパーのカゴに収まりそうなくらいだったのに、いまはダチョウみたいな大きさだ。


「大きさに慣れなくて歩くのも大変だったんですけどね。昨日くらいから平気になってきたんですよ~」


 2人でどらみんの足を拭いて、家に上がる。祖父ちゃんと住んでた家みたいな匂いがして、ちょっと懐かしい気持ちになった。


「はい、どらみんの好きなカ○ゴンですよ~。これで遊んでてくださいね~」


 巨大なカ○ゴンのぬいぐるみをどらみんに与えて、僕らは2階の彩ちゃんの部屋に向かった。


 彩ちゃんの部屋は『どらみんチャンネル』で見たことのあるそのままで、棚にはチャンネル登録者数100万人突破記念の楯が飾られている。


 10畳以上はありそうな部屋の、いつもはカメラに映ってない場所に、ベッドがあった。


(あそこで……これから!)


 思い出さざるを得なかった――これから僕は、彩ちゃんとエッチなことをするのだ。


 ベッドに座る……のかと思ったら違って、ベッドを背もたれにして、僕らは並んで座った。


(やっぱり……妖精?)


 横目で見下ろす彩ちゃんの額が白くて丸くて、初めて気付いたけど睫毛がとても長い。つんと上を向いた鼻も小さくて朱い唇も人形めいていて、シャツの襟元からは甘くて良い匂いがしている。その奥に覗く肌も白くて、目を離そうにも、彩ちゃんが僕を見上げて、目があって、逸らせなくなって……彩ちゃんの吐く息も、とても甘くて。


 指先と指先が触れあい、気付くと。


「ちゅ……んく……ちゅ……ん……ん…………」


 どちらからともなく顔を近付け、キスをした。


「ん……んく、ん……ん……んあ、ちゅ、ちゅ、ちゅ……ん、んん、ん、ん…………あのね、いいかなあ。私……お願いがあるんですよ。私も――」


 彩ちゃんのお願い……もしかして、一線を超えても、いいとか――その時だった。


 どんどんどん!


 激しく、ドアがノックされたのだった。


「「!!」」


 僕らは、顔を見合わせる。


 すると、声がして――



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