157.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(9)(下々々)

Side:パイセン


 さんご:ヨシムラというのは、半グレ集団のリーダーだ。やはり地元の先輩後輩という間柄で、地元のヤクザとも繋がりがある


 さんご:そしてこの街を仕切ってるヤクザの組長は、光のお祖父さんの親友で光のことも可愛がっている。もっともいまは、光の迷惑にならないために距離をおいてるんだけどね。


 さんご:そんな力関係の中で、光の名前を使って良からぬことをしている輩がいる、なんてメールが組長に送られてきたら、どうなるだろうねえ?


 と、さんご君は言うのだけど、実はこの説明を受けるのは2度目だ。


 ヨシムラという個人名が出てるのを除けば、事前に教えてもらったのと同じ内容だった。


 スマホの、着信音が鳴っている。

 みおりんが、市川から取り上げたスマホだった。


「出ろ」


 スピーカーモードにしたスマホを、みおりんが市川の顔に近付ける。


「い、市川です……野村君……何か……?」


 スピーカーから出たのは、絶叫だった。


「ど、どういうことなんだよ! バーベキューやるっていうから、みんなで彼女とか、子供とかつれきたんだぞ! なのに……俺らみんな、裸にされてるんだぞ! なんなんだよ! お前らなにやってんだよ!」


「「「!!」」」


 絶句する市川達。

 

 一瞥して、スーツの男が聞いた。


「ヨシムラさんが受けた指示だが――言われた通り、全員、裸にして……取り上げた服やスマホはどうする? ここに持ってこさせるか?」


 みおりんが答えた。


「燃やして」


 みおりんがスマホを出してアプリを起動すると、そこには、私も家族で行ったことのあるキャンプ場が映っていた。さんご君が飛ばしたドローンによる、上空から見下ろす映像だ。


 映像では、普段はキャンプファイヤーの行われる中央の広場に衣服が詰まれ、ほどなく、火がつけられた。


 それを少し離れた場所から見てる男女は残らず裸で、彼らを囲むように立ってる男達、更に離れた場所には、キャンプ場にそぐわない高級車が停まっていた。


 裸にされてるのは、市川の仲間――女性を拐かしたり、その際に撮った動画や写真を共有していた男達と、その家族だ。


 彼らはさんご君のAIでキャンプ場に誘導され、ヤクザ経由で指示を受けた半グレ集団によって衣服とスマホを取り上げられたのだった。


「どうしてこんな目に遭ってるかは、そっちで説明して」

「分かった」


 作戦では、彼らをキャンプ場におびき出した後、彼らの自宅にさんご隊が忍び込み、このマンションで私達がやったように、家にあるなにもかもを回収しているはずだった――大雑把すぎる気はするが、記録メディアというのは、どこに収われてるか分かったものではない。


 さんご:面倒だから、家に火をつけて燃やしちゃったよ


 そしてそれも、どうやら終わったらしい。


 被害に遭った女性達の動画や写真は、これで全部なくなったということだ。


 市川達についてはスーツの男に任せ、私達はマンションを出た。


 作戦は、これで終了した。



「ごめん……ごめん。もう一回、整理させて」


 彩ちゃんが言ったのは、私のためでもあるのだろう。


「市川や仲間をこらしめるのはいいとして、家族まで巻き込む必要はあったんですかねえ?」


 作戦の後、どこか苦い想いが残ってるのは、それが原因だ。市川達をボコって終わりなら、もう少しは爽快な気分で終えることが出来ただろう。


 さんご君が言った――作戦を作る時にも、説明されたことだった。


 さんご:この作戦の目的は、データを回収すると同時に、市川達の関係性を破壊することにあった。


 さんご:被害女性達に、現在、イデアマテリアが接触している。彼女たちのうち何人かは裁判を起こすことになるだろう。


 さんご:その際、奴らが口裏を合わせるのを防ぐため、奴らの関係性を破壊しておく必要があった。


 さんご:家族を巻き込んだのもその一環だ。家族にも被害者になってもらうことで、市川達を庇いだてするのを防ぎたかったんだ。たとえば子供だったら『こんな目に遭ったのは、お父さんのせい』――そんな風に思わせて、家族の中での関係性を破壊したのさ。


 そんな説明を受けて、私が思い出してたのは映画やアニメで見たことのある『街に住む全員が共犯者で口裏を合わせていた』というミステリーのトリックだった。


 犯罪の母体である関係性を根絶やしにしない限り、問題は生き残り続ける――一方、彩ちゃんはといえば。


「メキシコのマフィアにでもなった気分ですねえ」


 という感想で、するとみおりんが聞いた。


「半グレの事務所は、燃やしたりしなくて良かったわけ?」


 さんご:通信記録から、半グレにデータが渡ってないのは分かっていた。物理メディアもね。市川達は、完全にクローズドな状態でデータを回していたんだ


 さんご:意外だったのは、ネットにアップする奴がいなかったことだけど、これは、連中にそんなスキルを持ってる奴がいなかったってことなんだろう


 さんご:でもあと少し遅かったら、そういう奴が仲間に加わってた可能性も否めない。だから、光が有名になったばかりの今の段階で事件が発覚したのは良かったともいえるね


「ふうん……さんごはさあ、異世界でもこういうことやってたの? 悪人をこらしめる、みたいな――」


 さんご:そうだね。何回かあったよ

 さんご:王命でね、違法な奴隷商人に便宜をはかっていた役人を捕まえて、一族まるごと処刑したり

 さんご:確かあの時は……

 さんご:全員の手足を砕いた後、街の真ん中の広場で魔物に喰わせたんだったかな


「「「…………」」」


 さんご:町娘を犯した貴族の息子を捕まえた時は

 さんご:首をはねた後、親兄弟を呼びつけて

 さんご:その首でサッカーをさせたりもしたよ


「「「…………」」」


 異世界人の蛮族度、ぱねえっす。


 しばしドンびきした後、再び口を開いたのはみおりんだった。


「あたしさあ、あんな連中に騙される女なんてバカだと思ってたんだけど、でもあれ、あたしがああなってたかもしれないんだよね……」


 みおりんが?


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お読みいただきありがとうございます。


次回でこの閑話も終わりです。

遂にあの人が……な締めくくりになる予定です。


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新作始めました!


ネトゲで俺をボコった最強美女ドラゴンに異世界でリベンジします!でもあいつ異世界でも最強みたいじゃないですか!ていうかバトルより先にイチャラブが始まりそうなんですが、一方そのころ元の世界は滅びていたようです


https://kakuyomu.jp/works/16817330665239304295

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