148.猫と一緒にダンジョンデート(後)

 ちなみに今回の『ダンジョンデート』企画、撮影許可をとってはいるが、いわゆる案件動画ではない。


 従って、施設側で交通整理をしてくれるわけもなく。


「みおりんです」

「パイセンです」

「角っ!」

「「「MMTで~す」」」


 と、いつもの挨拶をしてる時点で、足を止める一般客の人垣が出来てしまった。


 当然――


「あの~、申し訳ございませんが……」


 撮影場所のカフェから苦情が出て、移動することになった。それでも追い出されたわけでなく、代わりに奥の個室を用意してもらえたのだから感謝しかない。


 さんご;これはこれで取れ高が稼げた


 とは、さんごの弁だ。


「というわけで、今日はNRダンジョンでダンジョンデートするという企画なんですけど、彩ちゃんは、最後にデートしたのっていつですか?」

「大学時代ですね」

「どんなとこに行きましたか?」

「すたみな太郎です」

「それは……まあいいや。パイセンはどうですか?」

「……ないです」

「そうですか! では、今日はデートのお相手としてこの人に来てもらいました!」


 キューを出すさんごを横目で見ながら、丹田に力を込め、僕はカメラの前に飛び出した。


「こんにちはぁあ~~~! ぴかりんでぇえ~~ッすぅう!


「はい、というわけで、ぴかりんに来てもらいました。ぴかりんは、最後にデートしたのっていつですか?」


「え!?」


 僕がデートする相手といったら美織里だ。そして美織里とは、昨日、学校で……しかし、あれをデートと呼んでいいのだろうか? でも僕と美織里は、いつもああいうことしかしていない。それ以外だと一緒に探索したりするくらいで……もしかして、デート、したことない!?


 いやいやいやいや。


「え、いや、その……み、美織里さんはどうなんですか!? 最後にデートしたのっていつなんですか?」

「昨日」

「え?」

「昨日、学校で」


 あっさり美織里が答えると――


「(ギラリ)学校……?」

「(ギラリ)……学校?」


 彩ちゃんとパイセンの目が、ギラリと光った。


 そしてそんなのは全く構わず、美織里は声を張り上げるのだった。


「それでは! これから一人づつ順番にぴかりんとデートしていくわけですけど! 順番はクイズで決めたいと思います! ではみなさん、お願いしま~す!」


「「「「は~い」」」」


 呼ばれて出て来たのは、カフェの店員さん達だった。


「というわけで、撮影場所をお借りしているこのカフェ『ドン=ぶら~の』の皆さんに来て頂きました! みなさん、面白いあだ名をお持ちということで、それを当てた順番でデートの順番を決めたいと思います! では最初は、店長の卯月さん!」


「こんにちは。店長を務めさせて頂いてる卯月まりんです」


「では、卯月さんはどんなあだ名を持ってるのでしょうか~。ちなみにヒントってありますか?」


「私の……名前ですね」


「はい! ではまず私から! 『まりりん』!」


「違いますね」


「では次、彩ちゃん!」


「卯月だから『うっきー』」


「違います」


「では、パイセン!」


「卯月……4月だからエイプリル」


「違います」


「なんと全員、不正解! では卯月さん、正解をお願いします」


「『セクシー女優』です。理由は、セクシー女優にいそうな名前だから」


「うわ~! 言われてみればなるほど! でもこれは分かりませんよお! では次はこの方!」


「フロアマネージャーの森山です。ヒントは……私の顔ですね」


「では私から――『人殺し』!」


「正解です。人殺しみたいな顔をしてるということで、そう呼ばれています」


「いや~、見たまんまでしたね。というわけで、1番は私に決まりました。ふっふぅう!――では次の問題は、この方!」


「厨房リーダーの三橋です」


「ヒントはありますか?」


「私も顔というか、見た目ですね」


「はい、では彩ちゃんどうぞ!」


「『ブタ野郎』!」


「違います」


「パイセンは?」


「『冬になるとお風呂に入らなくなるオジさん』!」


「違います」


「おっとぉ。2人とも不正解! では正解は?」


「『頬が黒ずんだデブ』です」


「これも見たまんまだったぁ! では次の方お願いします!」


「スーパーバイザーの山科です。あの、自分も見た目って言うか……雰囲気がヒントですね」


「彩ちゃんどうぞ!」


「『童貞』!」


「正解です」


「ふううううう! これで2番目は彩ちゃん、3番目はパイセンに決定しましたぁあああ! ちなみにパイセンの回答は?」


「……『チー牛』」


「ちなみに『セクシー女優』の卯月さんと『童貞』の山科さんはお付き合いされてて、秋にはご結婚の予定だそうです! おめでとうございま~す!」


 というわけで、こんな感じで決定した順番に従い、まずは美織里とデートすることになった。


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