145.猫が暴いたスキルとは(前)

『印刷同好会』で話をしてたら、休み時間が終わってしまった。


 急がねば――あれ?


「ふにゃおーん」


 さんごが着いてくる。

 蒲郡先生をチェックして、用事はもう済んだと思うんだけど……


 さんご:ついでに、この学校の生徒のスキルをチェックしておこうと思ってね


 さんご:さっきの彼女たちみたく『探索者証を持ってないスキル持ち』が他にもいるかもしれないしね


 だから、校内を回ってチェックすると?


 さんご:まあ見てればわかるよ


 よく分からないまま、さんごと一緒に教室に戻ると。


「「「かわいい~~~っっっ!!」」」


 授業中の教室が、さんごの可愛さを称える絶叫で満たされることとなった。


「ななな、何があったんですか!?」


 と、隣の教室で授業してる先生が慌てて見に来るほどで。


 当然、噂は校内を駆け巡り、次の休み時間になると――


「本当だ! さんご君だよ!」

「かわいい~っ!」

「でも強いんでしょ?」

「東京のダンジョンで無双してたって」

「それな! 動画で観たし!」

「吸いたい~! さんご君、吸いたい~っ!」


 廊下は、学年やクラスを問わず集まった生徒達でごった返した。


 それに対して、さんごは。


 さんご:ほら。僕くらい可愛くなると、向こうから見に来るんだ。わざわざチェックして回る必要なんてないのさ


 と、ドヤ顔で、集まった生徒達のスキルをチェックしている。


 さんご:入部予定者のリストリストに入ってないスキル持ちがいるね。ここ数ヶ月でスキルが生えたんだろう。名前を送るから、校長に渡しておいてくれ


 そんな追加の入部予定者が、昼休みを過ぎる頃には、5人を超えていた。


 彩ちゃんにメッセージを送ったのは、午後の休み時間だ。



 光:放課後、一緒に校長室に行ってもらえませんか

 彩:いいですよ(サムズアップの絵文字)



 というわけで、職員室の前で待ち合わせして、校長室に向かうことになった。


 さんごが調べてくれた、追加の入部予定者のリストを渡す。


「この人達を、入部予定者のリストに加えてもらえませんか? リストに入ってないスキル保持者です――多分、前回のリストを作った後にスキルが生えたんだと思います」


「なるほど……では声をかけて、彼らも明日の顔合わせに出てもらいますか」


「顔合わせ……ですか?」


「ああ、そうだ――言い忘れてたかな。夏休みに入る前に、探索部の入部予定者を集めて顔合わせをしようという話になってたんですよ。決まったのが先週で……洞木先生には? 連絡なかった?」


「うかがってませんでしたね~」


「そうですか……失礼失礼。入部希望者には連絡したんだけどなあ。それですっかり、洞木先生にも連絡した気になってましたか」


 ああ……そうか。


「顔合わせは――夏休み中に勝手にダンジョンに入るなとか、そういったお話をするためですか?」


「そうなんだよ……夏休み中に探索者の資格を取る生徒もいるから……そうだ。資格を取る意思のある生徒を集めて、洞木先生に引率してもらったりって……お願いしていいですか?」


「大丈夫ですよ~。では資格を取るついでに、私の同行がないとダンジョンに潜れないように手続きするというのはどうでしょう」


「そんなことが、出来るんですか?」


「知り合いに教えてもらったんですけど、あらかじめ協会に連絡しておけば、資格の申し込み自体も学校を通してでないと出来ないようにしてもらえるみたいです」


「ほお……では、顔合わせで使う予定のスライドがありますから、そこらへんの文言を加えて……もちろん裏取りもして……2時間くらいで作り直してもらえますか?」


「はい。ではまず裏取りをしますので、その間にスライドのデータをいただけますか?」


 なんということだろう。僕が連れてきたせいで、彩ちゃんの仕事が増えてしまった。彩ちゃんに来てもらったのは、ぜんぜん別の目的だったのに!


「あの……校長先生、ちょっとよろしいでしょうか?」


「なんだい?」


「朝のあのお話……洞木先生にも聞いてもらいたいんですけど」


「ん? んんんんんん~」


「考えたんですけど、洞木先生に話しても、そんなに悪いことにはならない気がするんですよ」


「んんんん~ん……まあ、いいでしょう」


 校長先生の了解を得て、僕は、蒲郡先生が探索部の顧問になるという案があることを、彩ちゃんに話した。


 すると――


「いいんじゃないですかね」


 あっさり、彩ちゃんの了解が得られたのだった。


「蒲郡先生にはよく声をかけてもらって優しくしてもらって……正直、蒲郡先生の言動には裏っていうか、悪意というものが感じられないんですよね」


 上手く言葉には出来なかったけど、つまり、そういうことなのだった。


 そしてそんな思いは、小屋に帰って美織里と話して、より確かなものとなるのだった。


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