139.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(8)

Side:美織里


「「「「「ふみゃ~お」」」」」


 寝転がってタブレットを見るあたしの周りで、さんご隊がくつろいでいる。 


 ここ数日の騒動も一段落ということで、過酷な労働を強いられてた彼らも、さすがに休暇が与えられていた。


 なんの予定も入っていない、完全なオフだ。


 最初さんごは、慰労として自分の知り合いのメス猫達を呼んだパーティーを開こうとしていたのだが、それはあたしがやめさせた。


 自由になる金と時間――真に労働者が求めているものが、分かってないのだ。


「しっかし、ゲラム=スピはよくやってくれたわよね~」


 あたしが見てるのは、OFダンジョンでの戦闘――MTTあたし達のチャンネルにアップされた、VS偽カレン戦の動画だ。


 元の動画には、あとあと突っ込まれそうな王子の姿と声も入っていて、削除する必要があった。それを、ゲラム=スピとその部下達に頼んだのだった(忙しすぎて、さんご隊が壊れる寸前だったため)。


 そして完成した動画はジャンプカットの挿入なども効果的で、結果、公開後数時間で100万再生を超える大バズり。


「いやあ、バズったバズった」


 そう言ってゲスく笑うさんごの俗物っぷりは、まあ嫌いじゃないけどね。


「ところで、ホテルから苦情が来てるんですけど~。小田切さんにめっちゃ怒られたんですけど~」


 装置が完成するまでの3日間、ゲラム=スピとその部下達は動画編集にいそしんでいた。では、肝心の王子は? そして護衛騎士のリュ=セムが何をやってたかというと……


「彼らも生身の身体を持つのは初めてなわけだから……交尾に夢中になってもおかしくはないさ」


 そうなのだ。


 VS偽カレン戦で、どらみんが巨大化した。それに巻き込まれる(?)形で王子とリュ=セムも巨大化――人間大のサイズに。戦いが終わった後もそのサイズのまま、王子とリュ=セムは、フィギュアに戻らなかった。


 そして何もやることのなくなった3日間。


 イデアマテリア御用達となってる駅前のホテルで、王子とリュ=セムはヤりまくっていたのだった。あまりの激しさに、他の宿泊客から苦情がくるくらい。


 朝はモーニングビュッフェでいちゃいちゃして、食後は部屋でヤりまくって、昼はランチビュッフェでいちゃいちゃして、食後は部屋でヤりまくって、夜はディナービュッフェでいちゃいちゃして、食後は部屋でヤりまくって。


 おまけに――


「だったらホテルから出るなって話もあるでしょ」


 ホテルでヤりまくるだけでなく、あの2人は街にも出没して、いちゃいちゃしてる姿を人目にさらしまくっていたのだ。


「ネットにあがりまくってるわよ――あたしの顔をした男と光の顔をした女が街のあちこちででベロチューしまくってる写真が!」


「そんなの性別が違う時点で顔が似た他人じゃないか」


「知ってて言ってるよね!? ネットで盛り上がってる『みおりん実は男だった説』とか『ぴかりん実は女だった説』!!」


「いいじゃないか。アリバイもあるんだし」


「それはまあ……そうだけど。納得出来ないのよ……こんな頭の悪そうな説に自分の名前が使われてるのが」


 写真が撮られた時刻、あたしも光も、探索者協会で事情聴取を受けていた。あんな大騒動になったのだから当然で、焦点はこの騒動の原因にイデアマテリアが関与してるかというところだった。


「事情聴取でさ。明らかに『千葉の件』を知ってて揺さぶりかけてる奴、いたよね」


「『お肉大脱走』の線から攻めてきたあいつか。確かに『千葉の件』を知らなければそんな発想は――あ、『モ肉』絡みのコラボがあったか」


「でさ……あの時フォローしてくれたおじさんがいたでしょ。あの人、なんなわけ?」


「光の知り合いだよ。ダンジョン庁の切れ者らしいね」


「切れ者? あんな中華ちまきみたいな顔して? 正直、あのおじさんがフォローしてくれなかったら、ちょっと逃げ切れなかったかもってところもある……繋がり、キープしたいわね。小田切さんでも差し出す?」


「君は本当に酷いことを言うね」


「で、洞窟にいた異世界人って、あんたのとこのってことでいいの?」


「ああ。僕がいた世界の人間だね」


「あたしたちの祖父ちゃんも、そっちの世界から来たっていうのも?」


「それも、まず間違いない。君たちの先祖が何をやったかは分からないけどね――僕が宇宙の旅に出てから、200年は経ってるから。その間に何があったかまでは、さすがに把握してない」


「あー。宇宙ねー。あったよねー。そういう設定」


「君たちのルーツについては、例の村から調査を始めることにしよう」


「その次は?」


「異世界に行って調べるというのもある」


「へえ……忙しくなるわね」


 もうすぐ夏休みだけど、光だけでなく彩ちゃんやパイセンのトレーニングもあるし、動画の撮影や配信用の探索もしなければならない。


 そして、何より先に来るのが――


「君も光も、まずは補習だろう?」


 あたしも光も『クラスD昇格者向け講習』やイデアマテリアのあれこれで、期末試験をぶっちしていた。このままでは留年なので、夏休みになったら補習を受けて最終日の試験にパスしなければならない。


 もっとも試験自体は事前にほぼ本番と同じ問題が配られるとかで、不合格になることはまずないそうなんだけど……そうそう。


「ところでさー。これやったの、あんた?」


 タブレットに表示したのは、カレンがアメリカに帰国したというネットの記事だ。


 そこに添えられた写真で、カレンは眼帯を着けていたかった。そして露わになった右目は、明らかに義眼ではなかった。


 問題は、それを誰が治療したやったかということなんだけど――


「さあね」


 と、さんごは顔を背けてとぼけてみせるのだった。


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お読みいただきありがとうございます。


長かった第7章も終わり、次回から第8章に入ります。


ところで第6章と第7章でのPVとフォロワーの減り方が酷いことになっていまして……第6章と第7章を非公開にして、第5章からいきなり続く形にすることを考えています。


ストーリーの展開上、第6章の98話から100話と、108.5話。第7章の109話は書き直した上で残したいと思っているのですが。


おてもやんの自宅訪問とか、書いてて楽しかったんですけど、PVの減り方が酷くて……あと、マリアがお茶目なことをした回の後はだいたい激減してます。


とりあえず、大塚太郎が登場するエピソードは全て非公開になる予定です。


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