136.猫と久々の探索です(15)絶望的物量

 どうやって使うかなんて、知らない。


 異世界の『龍族の勇者の鎧』のマニュアルなんて、あるはずもない。


 でもそれを着て戦えてるのは『鎧』の側でフォローしてくれてるからなんだろう。


不純なる水銀アマルガム


 打撃したすべてを腐り朽ちさせる拳に、僕は。


「雷の龍咆《サンダー・ブラスト》!」


 雷のブレスで応じた。


 もちろんブレスを吐くなんて僕のスキルにはないし、鎧にそんな機能があるかも知らない。


 感覚としては『雷神槌打サンダー・インパクト』を思い浮かべたに過ぎない。それを『僕が持つ最大火力のスキル』くらいの意味に鎧が翻訳して、ブレスを放ってくれたのだろう。


 ブレスとして放たれたのは熱量だけではないらしい。


fsギョ……fsfdsギョーーーーム…………」


 巨大なOF観音の拳にぶち当たり、ブレスはその進行を押しとどめていた。


 だけど、気配で分かる。


 背後から、空いたもう片方の拳が迫っている。そちらも『不純なる水銀アマルガム』を使ってるかは分からないけど、当たれば大ダメージを受けるのは確実だ。


「ごおおおおぉおおおおおおむっ!」


 でも直撃まで数瞬余して、背後の気配が消える。


「ぴかりん! 後ろは任された!」


 王子が言えば周囲の『鳥』や『鎖』が霧散する。


 どらみんの、ブレスが打ち払ったのだ。


 どらみんの口から放たれた光条は、僕のそれとは比べものにならないくらいに太くまばゆく。


 OF観音の拳を押し返しながら、更には分岐した細い光線で新たに出現する『鳥』や『鎖』を残らず消し飛ばしていた。


 そして、遂には――


「|fsfdsギョーーム!!」


 OF観音の拳を、肩のあたりまで遡って粉砕した。


 同時に、僕が抑えていた拳にもひびが入り、粉々になる。


 OF観音に肉薄しながら、再び僕はブレスを放った。


 ここまで近付けば分かった。

 喉ではない。

 偽カレンがいるのは――あそこだ。


「雷の龍咆《サンダー・ブラスト》!」


 雷のブレスが、OF観音の胸元を叩く。

 白い外殻が砕け散り、露わになったそこには。


「!!」


 目を見開き、僕を見る偽カレンがいた。

 そこに向かって飛び込もうと、僕亜加速する。


 ――その時だった。


fsfdjkギョーーーー…………」


 どらみんのブレスに破壊されたOF観音の頭部が、海に落ちていく。両手も、既にない。


 なのに、掴まれていた。

 巨大な、手によって。


fsfdsギョーーーーム…………」

fsfdsギョーーーーム…………」

fsfdsギョーーーーム…………」

fsfdsギョーーーーム…………」


 ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……覗き込むように見下ろすのは、4体のOF観音。


 更には――


「ごぉあおおおおおおお!!」


 2体のOF観音によって、どらみんが潰れんばかりの様相で抱きすくめられていた。


「「雷の龍咆《サンダー・ブラスト》!」

「ごおおおおぉおおおおおおむっ!」


 掴まれた手や腕をブレスで破壊し、僕とどらみんは空へと逃げた。高度100メートルは超えてただろう。でも全てを見渡すには、まだ低すぎた。


 見下ろす海を埋め尽くさんばかりだった。


 軽く数十に達するほどのOF観音が、海から現れようとしていた。


 OFダンジョンの、ほとんどを占める海。そこを満たす膨大な魔力を使い、作れるだけのOF観音を、偽カレンが作ったのだ。


 最初のOF観音を見れば、偽カレンは奥に潜るところで、続けて僕が破壊した外殻や腕、頭部が再生されていく。


「これほどの魔力、情報生命体われらでも扱うのは困難――そうか。『ゲラム=スピ』と偽カレンの融合した魂とカレン本人本体本体の魂がリンクしておるか。融合した魂には意思を与えず魔力回路としてのみ用い行動の決定は本体で――ならばこれだけの魔力を扱うのも可能!」


 と、王子が言えばさんごも。


 さんご:美織里が言うには

 さんご:カレンはもともとの魔力量が大きい

 さんご:大量の魔力を扱うのは慣れている

 さんご:その魂が2つ

 さんご:しかも片方が人格維持に割くリソースを

 さんご:魔力の制御だけに振ったなら

 さんご:この馬鹿げた光景にも納得だ


 と。


 2人が言ってることの意味は、なんとなくでしか理解できない。


 確かなのは、この海の魔力が尽きない限り、OF観音が作り続けられるということだった。


fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』『fejギョゥ!』


 再び現れる『鳥』の数も、その間から僕らを狙う『鎖』も、その数はさっきまでの数倍。いや、数十、数百倍?


 圧倒的な物量差――でも。


 絶望的な光景を目の前にして、でもまだ僕は絶望していなかった。


(美織里なら、どうするだろう?)


 そんな考えが、頭の隅に浮かんでいたからだ。


 そしてそんな考えは、すぐに終わった。

 答えが、現れたからった。


 声とともに――


「だったらさあ。ここにある魔力がなくなるまで、ぶん殴ればいいってことなんじゃないの?」


 銀色のサーフボードに乗った美織里が、僕らがいるよりも、更に高くの空から現れたからだった。


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