叔父に家を追い出された僕が異世界から来た猫と出会い、ダンジョン配信でバズ狙いすることになった件。ちなみに元アイドルで美少女探索者の従姉妹は僕にべた惚れです
134.猫と久々の探索です(13)王子の提案
134.猫と久々の探索です(13)王子の提案
「塞ぐでないぞ!『ゲラム=スピ』! 貴様はまだ敗れてなどおらぬ!」
「きゅー!」
空を落ちていく銀の塊=『ゲラム=スピ』を、王子の駆るどらみんが咥え取った。
そのまま緩い弧を描きながら、僕の側へと降りたつ。
見上げれば――
「
もう何度も聞いたその声が、いまはOF観音の口から放たれていた。
僕らを見下ろす双眸には、コンクリートの像では有り得ない、生物の輝きと湿度が宿っている。
あれは――『ゲラム=スピ』を身体から追い出すのと同時に、スキルまで奪ったのだろうか。
『
OF観音の周囲に現れる無数の『鳥』は、数日前、僕らと駅前で戦った時に『ゲラム=スピ』が使役したのと同じものだった。
「ふむ……なるほどな。気に病むことはないぞ『ゲラム=スピ』よ。我らを襲った際、お前はカレンという娘に浸食され、半ば己を失っていたのであろう? うむ、うむ……しかしだ」
どらみんの口では、咥えられた
「それ程までに言うのであれば、いま一度、力を示してみせよ――『ゲラム=スピ』」
それから身体を伸ばし、どらみんの頬を撫でながら。
「なあ、どらみん。少しばかり、頼みたいことがあるのだが……」
「きゅう?」
「ここにいる『ゲラム=スピ』に身体を貸してやってはくれないか?」
「きゅきゅう?」
「お前には、まだ眠っている力がある。それを『ゲラム=スピ』のスキルで、一時的に顕現させたいと思うのだよ。いずれ綾のために使われるその力、私に――いまこの時だけ、私のわがままのため使わせてもらえないだろうか? 私も欲しくなったのだ。友である猛き龍を駆り、共に敵を討つ――そんな冒険譚がな」
「きゅう!」
「おお、そうかそうか。ではどらみん。おまえは思うがまま、空を駆けブレスを吐いてくれればいい。『ゲラム=スピ』のスキルがそれに応え、おまえが未来に手にする力を顕現させてくれるだろう」
変化は、そんな王子の言葉が終わる前から始まっていた。デジャブの正体は、鹿田さんの持ってた盾だ。『強枠』――枠の内側に張られた物質を、枠と同じ強度に変えるスキル。いまどらみんの身体を覆う、魔力の枠が出現していた。
枠といっても、盾のそれよりもずっと複雑で、ぱっと見の印象は複雑に絡まった針金が、何十層にも重なったような感じ。
でもよく見てみれば、それが生物の骨格や内臓、血管や皮膚の輪郭を表したものだと分かる。更によく見れば、とても生物のものとは思えない、ジェットエンジンみたいな器官があるのも分かった。
「きゅっきゅきゅ~」
その中心にいるどらみんは、くすぐったそうな声をあげながら、それを見てた。
そして『枠』の増殖が止み、その内側に『面』が張られ始めた。内側も外側も関係なく、順番はばらばらだ。全ての『面』が張り終えられた時、そこにどらみんの未来の姿が現れるのだろう。
そんな
「結界!」
襲い来る『鳥』の大群を、僕は結界で押しとどめる。『ゲラム=スピ』の作業を見てたら、気付いたことがあった。
というよりは、感じることがあったというのが正しい。もっと正確にいうなら、感じられるようになっていた。
『枠』だ。
どらみんの周囲に張り巡らされてるような魔力の『枠』を、他にも感じられるようになっていた。
『
結界を破ろうとしている『鳥』たちはもちろん。
ここで戦っていた神田林さんや彩ちゃんの使ったスキルの残滓が『枠』として残っているのが感じられた。
(スキルを使うって――そういうこと?)
まず魔力の『枠』を作り、その内側を魔力で満たす――スキルを使うというのは、そういうことなのだろうか。
正解かどうかは分からないけど、感じたそれから学ぶことは出来た。
たとえば神田林さんの『エアステップ・自在』が残したのだろう、無数の六角形がならんだ枠――ハニカム構造で、強度を増しているわけか。
「結界!」
真似して結界を貼り直す。まずは六角形の『枠』を並べ、そこに魔力の『面』を張っていくイメージで。最初に僕が張った結界は、無数の三角形の『枠』で、『枠』のひとつひとつの大きさもばらばらだった。
でも最初に『枠』をイメージは形も大きさも揃って――
(やっぱり……強度が増した!)
続けて、もう一度。
「結界!」
結界の表面に棘の『枠』をイメージして結界を張れば。
『
『
『
ぶつかってきた『鳥』が串刺しになって消えた。
これを他のスキルにも応用すれば――でもそんな興奮は、次の瞬間、消し飛ばされていた。
「さあ行こう無敵のどらみん! 見せつけてやろう――未来のおまえの、更なる無敵を!」
傍らから飛び立つ、巨大な影によって。
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