叔父に家を追い出された僕が異世界から来た猫と出会い、ダンジョン配信でバズ狙いすることになった件。ちなみに元アイドルで美少女探索者の従姉妹は僕にべた惚れです
132.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(6)-6
132.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(6)-6
「さて、どうしたものだろうね?」
肩をすくめるさんご君に、みんな引きつった笑みで答えた。
洞窟の脇道から聞こえる声――
「スウェインもギータもレンゲルもマーシュも素敵ぃ! みんな素敵よぉおおお!」
天津さんと、光くんに絡んできたという男――いや男達か――は、明らかに、ヤっていた。
私は言った。
「行きます」
脇道の奥へと進んでいく私を、誰も止めなかった。2秒で脇道の奥へと着いた。
「「「「!!」」」」
それなりに警戒はしてたのだろう。
突然現れた私に、男達は顔を強張らせ。
「ふぁあっ! みんなどうしたの!? 急に! ○くなって! いきなり○くなって、ふぁあああ!」
天津さんは悲鳴のような嬌声をあげた。
そんな彼らに、私は『肉』達にも使ったハニカム構造の
「……おおぅ」
絡み合う男女の、歪で無防備な自意識というか、客観的に見て淫らしさよりも間抜けさの方が先に感じられる姿に、へにゃりと脱力してしまったのだった。
すると後ろから――
「乙女に変なもん見せるんじゃねえええええ!!」
飛び出した彩ちゃんが、盾で全員を吹き飛ばしてくれた。
おかげで、私もちょっと落ち着いて。
「エアステップ・自在」
当初の狙い通り、ハニカム構造の足場で彼らの動きを封じることに成功した。
「うおおお……なんだよこれ!
「スキル! こんなスキルがあるのか!?」
「壁! 壁なのかこれは!」
「畜生! 目に見えない板みたいな何かと地面に挟まれて身動きがとれやしねえ!」
説明的な台詞で慌てふためく男達とは別に、天津さんは。
「良かった! 助けに来てくれたんですね! 私、私、この人達に脅されて、こんな……こんなっ!」
そう言って涙を浮かべるのだが、当然、蝶野さんに突っ込まれた。
「なに言ってんですか。めっちゃ知り合いぽかったし、ぜんぜん嫌がってなかったし、むしろ天津さんの方が喰ってる側っぽかったし! ストックホルム症候群とかそんなものじゃない、もっとエグい親密さの片鱗を味わいましたよ!」
「ちっ」
唇を尖らせ顔を背ける天津さん。この3日間接してきた、知的で気さくでちょっといい女風のキャラが崩壊した、これが彼女の素ということなのだろう。
それよりもだ。
「「「「と、トレンタ神様……!!」」」」
さんご君を見た男達が、目を剥いて驚愕してるのだけど――これはまた、何か新設定が加わりましたか?
やれやれ、といった風にさんご君が言った。
「ここにいる9人だけど、僕に関する情報の開示レベルが、ばらばらなんだよねえ。では話せるところまで、話してみるとしようか」
やっぱり、新設定が来たか。
「まず最初に、僕は異世界から来た異世界猫だ。そして元々いた世界では、ダンジョンとスキルシステムを作った、神に等しき存在だった」
「「「「うぉお! やっぱり!」」」」と地面の4人。
「そこでの名前はトレンタ。自分で名乗ったことはないけど、彼らが言ったように『トレンタ神』と呼ばれていたこともある」
「うおお……マジか」
「どうりで猫ちゃんは頭がいいと思ったのじゃ~」
「おう”ぇええええ」
ふと思ったのだが、この3人――尾治郎さん、マリア、おてもやんは、いつの時点でさんご君が喋れることを知らされたのだろう?
まあ、いいか。自分のことを思い出せば、かなり軽い調子で、突然、不意打ちで爆弾を投げ渡されるような伝え方をされた気がする。
二瓶さんたちもそうだったし、きっとこの3人も同じような感じで教えられたに違いない。
ところでだ。
「うん。僕の話はこれでいいかな」
さんご君の話は、早くも終わってしまったらしい。もっとも『異世界から来た』とか『異世界では神に等しい存在だった』なんて言われてしまったら、後にどんな情報が開示されたところで蛇足に過ぎない気もする。
「君たち、名前は?」
さんご君が、男達に聞いた。
「スウェインっす」
「ギータっす」
「レンゲル」
「マーシュ」
男達が、答えると。
「名字は?」
「俺ら、平民なんで」
「おかしいな――君たち、貴族だよね?」
「いえ、そんなこたぁ……」
「君たちはさ、僕のことをトレンタ『神』なんて呼んだくせに、神に接するに相応しい態度をとろうとしていない」
「そりゃ、すいません……
「下賎な
「…………」
「君たちの、下賎な出自の人間としての態度そのものが、取り繕ったものだからだ。つまり、君たちは仮面を被っている――貴族という素顔の上にね」
「どうして……貴族だと? 平民が、もっと下の人間を装うことだって、あるかもしれませんぜ?」
「そんなのは、装ったところで意味がないだろ? 何故装うか……仮面を被るか。それは、仮面を被る前と後とで、全く違う人間になれるからだ。そして君たちが被っている、ならず者風の仮面と最も遠くにあるのが――貴族だ。違うかい?」
「…………」
「もう1度聞こう――君たちの名前は」
「スウェイン=ボードリヤ」
「ギータ=ドレイン」
「レンゲル=クレインスタイン」
「マーシュ=ドージャ」
「ドレインとクレインスタインは聞いたことがあるな。ドージャは知らないが、響きからすると北方4氏族の流れか。それとボードリヤ――王族じゃないか」
「「「「…………」」」」
「その鎧は先王あたりに貰ったか? 正妃の子ではあるが王位継承の目はない第7王子あたりが、年の離れた兄の仕事を引き継ぐべく、学園時代の仲間と一緒に重要かつ泥臭い仕事で経験を積んでいる――といったところかな?」
「おっしゃる……通りでございます」
男――スウェインの声は真摯で切実さの感じられるものだった。
しかし、私の横では。
「ぶ、ぶぐぶぐ……ぶぶぶぶ」
彩ちゃんが、必死で笑いを堪えていた。
気持ちは分かった。
真摯な声を真摯な顔で発するスウェインだが、ちょっとカメラを引いてみれば、お尻丸出しの状態で地面に横たわり、私の作った
「ぶぶぶぶ」
「ぐぐぐぐ」
お互いを肘で突つきあいながら笑いを答える私達だったが、そんなのとは関係なく、さんご君が聞いた。
「では教えてくれないか? 君が任されている、仕事について」
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