叔父に家を追い出された僕が異世界から来た猫と出会い、ダンジョン配信でバズ狙いすることになった件。ちなみに元アイドルで美少女探索者の従姉妹は僕にべた惚れです
132.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(6)-2
132.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(6)-2
Side:パイセン
よりによって、こんな時に――
「イデアマテリアと契約して、配信者になりませんか?」
いきなりそんなことを言われて、驚かないわけがない。
「「…………え?」」
宇宙を見る猫みたいな目の2人――二瓶さんと猪川さんに、続けて彩ちゃんは言った。
「いきなりこんなことを言われて驚かれるのも当然でしょうが、弊社社長の小田切から、お2人のスマホに契約条件と配信企画案をお送りしました。どうか、ご査収いただければと……」
「「!!」」
ばばっと音がしそうな慌ただしさで、2人がスマホを見る。
うわあ……という声の後、最初に口を開いたのは猪川さんだった。
「俺と蝶野と鹿田で『現役大学生探索者のキラキラ☆ダンジョンチャンネル』? 配信収益は事務所と7:3で、年俸500万――家と車も提供!?」
すると、二瓶さんも。
「『おじさん探索者の目指せクラスA再チャレンジ』?……一ノ瀬も? 一ノ瀬は、もう契約済みなのか!? おいおい年俸も魅力的だが、イデアマテリアの自社株購入オプションって、これはもう……ううむ……ううむ」
「で……いかがでしょう? 即決していただけると、嬉しいんですけど」
「いや、これは……願ってもない話ではあるんだが……どうにも腑に落ちない」
「そうですね。二瓶さん……不可解っていうか、確かに腑に落ちない」
「猪川君もそう思うか。そうだな……願ってもない話というか、本来なら、こちらから願っても叶わないような話だ。この条件を呑まない探索者なんて、そうはいないだろう。しかし……それが、どうして御社から? イデアマテリアさんから、俺達に?」
困惑した顔の二瓶さんに、困った顔の彩ちゃんが答えた。
「実を言えば、お2人については、以前から獲得候補に挙がっていたんですよ。イデアマテリアは、優秀な探索者を求めています。失礼な言い方かもしれませんが、現在イデアマテリアが契約している探索者は、皆、優秀すぎるのですよ。その点、あなた方は普通に優秀と呼べるレベルに留まっている」
彩ちゃんの口舌の滑らかさは、台本をそのまま読んでいるからだった。
さんご:イデアマテリアに不足しているのは、あなた方のような探索者なのです
さんご:熱狂より共感を抱かせる探索者
さんご:それこそが、スタートを切ったばかりの弊社が、今後長く成長していくための礎となってくれると考えているのです
さんご君の原稿をエモーショナルに読み上げ、彩ちゃんが息を吐いた。
「ぷはーっ」
二瓶さんと猪川さんは、顔を見合わせて。
((……どうする? いきなりこんなこと言われて、話が良く出来てる分だけ、逆に騙されそうな雰囲気がぷんぷんしてるんだけど))
とでも考えていそうな様子だった。
まあ、無理はないだろう。
二瓶さん達が獲得候補に挙がっていたというのは、嘘ではないと思う。さんご君なら、陰でそういうことをするAI的なものを操っててもおかしくはない。
問題は、何故、今なのかということだ。
「!?」
彩ちゃんが、ぎょっとした顔になった。
台本に、新たな台詞が付け加えられていた。
さんご:まあ、何故いまなのかって疑問は
さんご:持たれてて当然だと思うんですよ
さんご:正直に言いますと
さんご:これから我々がやることを
さんご:社外の人間に見せたくない
さんご:しかし都合の良いことに
さんご:お2人とも弊社の獲得候補
さんご:だからというわけで
さんご:あえていまこんなお話をしているわけです
それを彩ちゃんが読み上げると、二瓶さん達の顔がみるみる強張っていった。
猪川さんが聞いた。
「断ったら……どうなるんですか?」
答えは、秒で返った。
「忘れてもらうさ――これから見ることを、全部ね。君たちが想像もつかない謎テクノロジーを使って、脳味噌から、きれいさっぱり記憶を消去させてもらう」
声は、猪川さんの膝くらいの高さから発せられていた。
「ちなみに、これから起こることを見ないという選択肢は無い。ほら――既にもう、見ちゃってるし。ね?」
そう言うと、さんご君はにやりと笑って4足歩行に戻ったのだった。
●
その数分後、二瓶さんと猪川さんはスマホに送られてきた契約書にサインし、無事イデアマテリアの契約探索者となったのだった。
●
もう素性を隠す必要のなくなったさんご君は、そこから喋りまくりだった。
「二瓶達とも契約したしドローンの記憶媒体も壊したしで、外部に僕らの秘密がバレる心配も無くなった――さあ、派手に行こうじゃないか!」
「「おう!」」
「「…………おう」」
「まずはフォーメーションだ。二瓶は遊撃タイプでスキルは『
全体攻撃?
「今日、ずっと試してた
そう言ってさんご君が送って来たイメージを見て――なるほど。
私は『エアステップ・自在』の新たな使い方を、確かに掴んだのだった。
『肉』の大群が視界に現れたのは、その数分後のことだった。
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