122.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(5)

Side:美織里


「これって何て言ってるの?」

「いや、その……なんというべきか……」


 あたしの質問に、リュ=セムが言葉を濁す。


dskfjkdsfhギョギギギッ、ギョッ


 その声は、あたしの右腕から響いている。


 正しくは、あたしの右腕に巻かれた分厚い布の筒からだ。筒は血圧計を改造した装置で、言うまでもなくさんご謹製。昨日の夜、さんごの首輪ストレージリングを通じて送られてきたものだった。


 さんごは言った。


さんご:千葉の戦いで収集した情報生命体のデータから

さんご:彼らの言語体系が解析出来た

さんご:君の右腕のスキルも、彼らと出自を同じくしている

さんご:その装置を使って

さんご:君の右腕に留まってるスキルにアプローチしたい

さんご:彼らの言語で語りかけることにより

さんご:そのスキルの実用化が図れると思う


 というわけで、右腕のスキルに機械が話しかけるのを、じっと見守っている。


fjdlkっfkjdギゲッ、ゴッ、ギギギ


 繰り返される声が何を訴えてるのか、あたしには分からない。


「うわ、うわ。うわぁ……」 


 だがリュ=セムの反応を見る限り、ロクでもないことなのは疑う余地がなかった。


fhsdjfsfdsゲゲゲ、ガ、ギャギッ


「うわ、うわ。なんと、なんと罰当たりな……あひぃっ!」


 東京にいる王子は男の姿になったそうだが、こっちでもリュ=セムが女――女体化した光になっている。


 あたしが散々いじくり回し済みなのは、言うまでもない。

 というか、現在進行形でいじくり回し中だ。


 華奢な身体を握って指をもにょもにょさせるたび「あふん」「ひぃ……」と切なげな声を漏らして身を捩らせるリュ=セムを楽しみつつ、反対側の手で、あたしはスマホを操作していた。


 画面に表示されてるのは、ネットの掲示板のあたしのスレッドだ。



【ダンジョン探索者・春田美緒里を語るスレVol.2501】


225:みおりん考察厨

ダンジョン&ランナーズからの声明。

弊社契約探索者 カレン・オーフェンノルグについて

https://dnr-jp.com/topic/20xx/427


要約すると、こういうことらしいです。

・カレンは入院中

・2日前に入院してから、1度も病院から出てない

・昨日流出した病室内の動画については、流出経路も含めて調査中

・この様な事態をD&Rは憂慮している


OO駅で起きた騒動について、カレン本人は無関係ということらしいです。

昨日流出した動画については、監視カメラで撮影された本物と認めていますね。


226:名無しの探索者

どうして『本物と認め』たことになるわけ?


227:名無しの探索者

≫226

原文でも『流出』って書いてあるだろ?

つまり、病院のサーバーか何かが出所=本物ってわけ

フェイク動画だったら『流布されている』とかになるんじゃね?


228:名無しの探索者

≫225

となると、どうしてぴかりんを襲ったのかが腑に落ちない


229:名無しの探索者

≫225

イデアマテリアの見解も欲しいところだが……協会からストップかかってる?


230:名無しの探索者

OO駅で隠し撮りされた動画を見たけど、ぴかりんも彩ちゃんも強かったな

パイセンは何やってるのか分からんかったが


231:名無しの探索者

パイセンは、乱戦に向いてないのでは?

1VS1でしか使えないスキルなのかも


232:名無しの探索者

≫231

多分そう

MTTの動画を見る限り、パイセンは暗殺者タイプ


233:みおりん考察厨

さて、ここで話題を投下。

OF駅近くのレストランで撮られた動画です。

http://dansionchannnel.uploader/984739876837~


234:名無しの探索者

なんだこれ


235:名無しの探索者

天井から黒いボールが飛び込んできて????

厨房の方に転がっていって????

厨房から肉が????


236:名無しの探索者

≫233

ツイッピーでトレンドになってるあれか


237:名無しの探索者

OF駅ってことは~?

あれあれあれ~?


238:名無しの探索者

確かぴかりん、今日はOFダンジョンだよな?

関東のクラスD講習っていったらOFダンジョンだし


239:名無しの探索者

これは無関係っていうのは難しくなってきたんじゃない?

カレンもぴかりんも


240:みおりん考察厨

ツイッピーの続報を見ると、どうやら肉もOFダンジョンに向かってる様ですね。



「じゃ、行こうか」


 畳を叩くと、スライドして地下に続く階段が現れる。


「「「「「みゃぉ~ん。みゃぉ~ん」」」」」


 小屋の地下はさんごの工房になっていて、広さは200平米。


 これを作るため工事に2日ほどかかったが、その間ホテル住まいとなった光と散々いちゃいちゃ出来たので、あたし的にはもっとかかってくれても良かったくらいだった。


「「「「「みゃぉ~ん。みゃぉ~ん」」」」」


 工房では、さんごの無茶振りで疲労困憊の小さなさんご達――さんご隊が、涙目で働いている。

 目下彼らに課せられているのは『シルバーサーファー』――あたしのサーフボードと、光の新装備の整備だったのだが、それも終わったみたいだ。


「タイフーンユニットは、首輪で直接さんごに送って」


 言い残して、あたしはサーフボードを離陸させる。

 レザースーツの胸元をちょっと開けて、そこにリュ=セムを突っ込むのも忘れない。


「あひぃ……淫らな、淫らな匂いがするのです……ああ王子……私は汚れてしまったのでしょうかぁ…………」


 もちろん行先は、OFダンジョンだ。


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お読みいただきありがとうございます。


第38話で張った伏線が、ようやく回収出来ました。


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こちらの作品もよろしく!

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