叔父に家を追い出された僕が異世界から来た猫と出会い、ダンジョン配信でバズ狙いすることになった件。ちなみに元アイドルで美少女探索者の従姉妹は僕にべた惚れです
45.猫はいないがダンジョンに潜る(やり直し)
45.猫はいないがダンジョンに潜る(やり直し)
次の水曜日――
2度目の『新探索者向けダンジョン講習』を受講した。
場所は、前回と同じ探索者協会。
前回と違うのは、やたらと人の視線を感じることだ。
僕は、エゴサをしない。
それは精神の安定を図るためなのだけど、同時に、ダイエット出来ない人が自分の体重を、多重債務者が自分の借金の額を知ろうとしないのと同じなのではないかという気もする――いずれは、向き合わなければならないのだろう。
前回から引き継いだテキストは、入院中にも読み返したりしてたから、それなりに書き込みが入っている。でも隣を見ると、もっと書き込みのある、付箋とインクで、以前見た時より更にごわごわで分厚くなってるテキストが。
神田林さんだ。
「久しぶり……安全講習は受けた?」
「うん。私は
安全講習とは、ZZダンジョンで掲示板に書き込んだりしたことへの罰で受けた講習だ。僕はファストファインダースの人たちと一緒に病院で受けたけど、そのとき神田林さんはいなかった。
「私は1日で退院したから……血液検査で、肝臓の値が滅茶苦茶だったけど」
「え?」
「筋肉痛よ。肝臓のGOTって値が、筋肉痛に影響受けるんですって」
「……ありがとう。僕を、お姫様だっこで運んだからだよね」
「あなただけじゃ、ないし」
「あの日のこと、思い出すんだけど……いちばん思い出すのは、神田林さんが頑張ってたところなんだ」
「!…………」
「神田林さんがいなかったら、僕は助かってなかったかもしれない――本当に、ありがとう」
「(ぼそっ)ばか……
「え?――そういえば、あの大学生の人たち、いないね」
「辞めたそうよ。ここで盗撮した動画を
「そうなんだ……じゃあ今日は、僕と神田林さんだけか」
「もう1人、先週受講するはずだったけど私たちの件で延期になって――今週受講することになった人が来るって」
神田林さんが言うのと同時に『もう1人』の人が入って来た。
20代前半の若い男性……と思ったら、ダンジョン探索部の顧問の山口先生だった。
「ごほっごほっ…………」
「おはようございます、山口先生。今日は探索部のために受講ですか? 夏休みに部で探索する話があるそうですけど」
「ごほっごほっ…………うん。ごほっ」
「…………」
「ごほっごほっ…………」
「…………」
「ごほっごほっ…………おええええ」
それからそんなに経たず、講師の先生が入ってきた。
前回と同じで2人。
1人は、一ノ瀬さんだった。
「こんにちは。探索者協会の一ノ瀬です。普段は後方のスタッフとして働いていますが、クラスDの認証バッヂを持っていて、こういった講習やダンジョンブレイクの応援などで月に1回はダンジョンに潜っています」
もう1人は、弓ヶ浜さんという現役探索者だ。
「はじめまして。弓ヶ浜きらりです! クラスC探索者で、今日は一ノ瀬さんの補佐で講師を務めさせていただきます!」
年齢は、山口先生と同じくらいに見える。
そして山口先生の好みにがっちり合致してたみたいで。
「ごほっ。ごほっ。弓ヶ浜さんは、ごほっ。活動はこの近辺で? ごほっ」
「そうですね。YYダンジョンがホームですね」
「ごほっ。じゃあ、ごほっ。ご自宅も、ごほっ。この近くで、おえええええええ」
「あ、もう時間ですね。授業再開しま~す」
座学の休憩時間に、めっちゃ話しかけてたのだった。
「おええええ。今度、食事でも、おええええええええ」
座学が終わったら、ダンジョンでの実習だ。
場所は前回事故のあったZZダンジョンではなく、XXダンジョン。
「え……家の近くなの?」
「うん。XXダンジョンってうちの近所まで伸びてて、ゲートもそんなに遠くないんだ」
XXダンジョンに着き、休憩をとったらいよいよ探索だ。
受付で手続きして、ダンジョンのゲートをくぐる。
ダンジョンの中でも――
「ごほっ。ごほっ、どうですか。ごほっ、弓ヶ浜さん。マップを見るのは、おえええええ。これくらいの、ごほっ。間隔で、ごほっ。どうですか。おえええええ」
質問する体で、山口先生が弓ヶ浜さんに話しかけまくっていた。
ましてや、休憩時間になったなら。
「ごほっ。ごほっ。今日の講習が終わったら、ごほっ。クラスD以上の探索者と一緒なら、ごほっ。おえええええ。探索してもよくなるそうですけど、ごほっ。弓ヶ浜さんは、おえええええ。そういう初心者への同行は、ごほっ。ごほっ、されたりするんですか? おええええええ」
「やってますよ」
「じゃ、ごほっ。じゃあ弓ヶ浜さんに同行を、おええええ。お願いしたかったら、ごほっ。どうすれば、ごほっ」
「誰が同行するかは協会の方で割り振ってるんですよ。だから、誰に同行してほしいとか、誰に同行したいとかいった希望は、受け付けてないんですよね~」
その後、ゴブリンが現れたりもしたのだが。
「おえええええ! おえええええ! おえええええ! どうですか弓ヶ浜さん!!」
山口先生が1人で突っ込んで倒した。
相手は1匹だったけど、山口先生ってけっこう強いんじゃないだろうか。
ちなみに一ノ瀬さんと弓ヶ浜さんの両方から、めっちゃ怒られてた。
そんな感じで、2度目の『新探索者向けダンジョン講習会』は無事終了したのだった。
そして翌日の木曜も、僕はダンジョンに潜った。
僕と美緒里とさんごと、それからある人を加えた、4人で。
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