四月憧憬

@onozu_18

四月五日

中学生肩書きばかりが先走り硬いブレザー肩に乗っかる


散り積もる赤茶の花びら新品のローファーで蹴るのはさすがにやめた


願わくば何も知らない朝の私の耳元でサイレンよ鳴れ


隣列 ひとつ違いの先輩はみんな大人な気がする、します


厳かな式中隣から聞こえた「来賓てなに」に激しく同意


体育館 四月の寒風容赦なく新入生の腹をも冷やす


続いては部活紹介、はよ終われ、背を曲げ腹の暴挙を逃がす


ざわついた、ような気がした列前方、もはやそれ捏造の記憶か?


こんにちは、弓道部です よく通る澄んだ音色に顔を上げると


※記憶は薄れるものだからもうその景色は靄の中です。


きれい、しか、出てこなかったそのあとの紹介文はぜんぶ忘れた


ちはやふる 女神と呼ぶことしかできない 袴姿のポニーテールを


駆け込んだお手洗いから出て、廊下、世界と切り離された静寂


花紙と部活紹介ポスターの色彩に囃し立てられ歩く


弓道部 さっきの袴の先輩が発した言葉のポスターをなぞる


「興味ある?」あの鈴の音が後ろから 振り向く間も無く横には女神


赤べこが壊れたように頷く私に「待ってる」とだけ


神様の通り道みたいに廊下の真ん中を伸びた背筋で歩いていった


先生も教科書も教えないだろう この感情はなんと呼ぶのか














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