第7話 甘いパンケーキ
「何か、食べるか」
彼はメニュー表を差し出した。不思議だ食べられる気分じゃないけどメニュー表で癒されている自分がいる。ぼーっと写真を見つめていると
「これいいじゃん、パンケーキとか」
もしかして、パンケーキ食べさせとけば元気になると思っている? 浅はかさが垣間見れて冷めていく。だめだ何を言われても闇に包んでしまう。
「じゃあ、パンケーキで。」
「飲み物は?」
「アイスティーでお願いします。」
彼はテーブルの呼び出しベルを押した。近くにいた店員が注文を取りに来た。
「えっと、パンケーキとアイスティーで。はい、一つずつ。あ、あとお水頂けますか」
えっ自分のは頼まないのと彼の顔を覗いた。それに気づいたのか
「あ~、いいのいいの。俺、学食食っているから」
「がっ学生さん? 」
「うん、大学生。そっちは。私服っぽいけど」
「えっと、会社員です」
あれ年下の学生に慰められてる? はっ、そんなことより確認しなければ
「ご、ご年齢は? 」
まるでお見合いの質問の聞き方のようになってしまった。
「大丈夫だよ、未成年じゃないから」
ほっと安堵した。それと同時に自分が情けなくなってきた。
「それよりさ何かあったの。あんな所で泣いてて」
「会社で全部私のせいなんだって言われて。せっかく仕事を教えた社員が自信を持って目がキラキラしてきた時に異動させるの。最初はね失敗や間違いで不安な目をしていた社員が日を重ねるごとにできることが多くなって、それが嬉しかった」
彼は黙って聞いていた。じっと真っ直ぐな瞳で。
「その社員が異動先で辞めたいって、私が甘やしているから教育も丸投げだって。もう任せられないって、仕事ができないから周りに距離置かれて自分の殻に閉じこもるなって。これ以上迷惑かけたくないから、必死に仕事してきたのに」
悔しさとともに涙が滲んできた。
全部を聞き終わった彼は静かに口を開いた。
「それってさ責任を押し付けてるだけじゃね? 俺、よく分かんないけど上司は業務管理を明らかに怠っているわけじゃん、その責任を君に押し付けて問題をすり替えているような気がする。きっと、それで大声を張り上げて力づくで通そうとしているんじゃないかな」
あれ、この人学生だよね。言ってることが、いや分析力っていうのかな凄い。
「我慢しちゃダメだよ。そんなのまともにくらってたら、おかしくならない方がおかしいって。とりあえず、そこから離れた方がいいよ。抱え込まないでさ、俺にでもいいから言って」
私が悪いわけじゃなかったんだ。そう思うとまた泣き出しそうになった。
ちょうどパンケーキが来たので取り皿をお願いした。
「半分っこしよ。二人で食べた方が美味しいよ」
「いや俺べつに食べたく…、分かったよ食べるよ」
取り分けたパンケーキに、アイスティーが体に染みた。
「美味しいね、はちみつが浸み込んでて。噛むとジュワって広がる。」
頬を抑えて、うっとりした。それを見た彼が微笑んでいた。
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