燃ゆる肺と血、それから

深緋ゆうほ

第1話

世が世ならおまえ人斬りだったよ、と云う友の居てましろきWord


正しかったことなどなくて燃ゆる肺 五臓六腑でまだ迷えるか


衝動と鼓動ばかりが胸に打ち手足が棒の彷徨さまよいびとよ


ぎりぎりの切り岸あるいは高望み(駆ケ込ミ乗車ハオヤメクダサイ)




就活のスーツは白い纏うたび抵抗したきこの世と思う


人生に予行演習なきことを幾度忘れて突き崩すのか


パンプスでなく革靴と決めたとて慣れはしなくて足の痛みは


初めから巡らす失望予防線あかねさす面接のち夕陽


えらばれぬ理由ばかりを身に注ぎone of ハンス・ギーベンラート


戦いたがり、たったひとりの。返り血さえも痛みの中に孵れば




ビハインド・イエロー・ライン 永久とこしえに乗ることのない列車の風を


過去からの呪詛という名のしょうらいのゆめ それでも祈り


自傷とは自己愛の異称、ゆえに骨までわれを裂きたい夏だ


小説家になりますという作文が心の底に磔の日々


どうせなら斬り死にが夢わたくしの最大瞬間風速のまま




ありふれた若気の至りだとしてもこの狼疾を棄てずに広野


研ぎ澄ますものなら言葉それのみをわが生き延びに望むのだから


手放したものとそのほか反故紙を重ねる腕をいちど下ろして


いくたびも開いた頁この果ての全てを見ても恐れない夜



そののちの捲土重来 光よりあかるい影を抱きしめてゆけ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

燃ゆる肺と血、それから 深緋ゆうほ @Euphonium1213

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る