第8話 I'll Be Back!

「えっ?!ドラゴンと話し合ってきたって?!」

ドラゴンとの交渉の顛末を聞いたドワーフたちは驚いた。この功績をもって、ありすたちワダラン一行は、ドワーフの国ウダウグへの入国し歓迎された。

「そなたたちがドラゴンとの交渉を成功させたとな?」

謁見を許されたありすたちに、ウダウグの王ラジオールがたずねた。

「はい、ドラゴンはもうこの国の宝を狙って襲ってこないと、約束してくれました」

「どうやってそれを成し遂げたのだ?」

「わたしたちは、異世界からやってきましたので、この世界にはおそらくないものをドラゴンにあげたのです」

「ほほう」

「これがドラゴンにあげたものです」

うさぎがピックをラジオールに見せた。

「なるほどなるほど……これはたしかに見たこともないものだ。で、これは一体なんなんだ?」

「これは楽器を演奏、この世界で言えば魔法を使うための道具です」

うさぎは、ピックを使ってギターを演奏してみせた。ドワーフたちは、初めて聴く異世界の音楽に驚き、そして感動したようだった。

「それでお願いがあるのですが、わたしたちが元の世界に戻るために、雷の力が必要なのです。ドワーフのみなさんなら、雷を操るためのポーションを作れると伺ったのですが」

「よかろう。だが、実はそのポーションは我々が作っているものではないのだ。我々に協力してくれている妖精たちが作っているものを我々は販売しているだけなのだよ。とはいえ、ポーションを渡すことはできる」

「ありがとうございます!」


ありすたちは妖精の住む森に案内された。ここで例のポーションが作られると言う。妖精たちは身長20〜30cmほどの大きさで宙に浮かんでいる。

ポーションの作り方はこうだ。魔力を集める力を持つ魔法の盃を嵐の日の野外に置いておくことで、大気の雷の魔力が魔法の盃に充填される。それを瓶に移し替えたものが雷のポーションなのだ。


ありすたちは、無事ポーションを手に入れ、再び飛行機に戻った。

「じゃぁいってみますか!」

「「「かんぱーい!」」」

全員でポーションを一気飲みする。視界が歪み、ちょっとした酩酊感がある。

ビリビリ!

「なにこれ?」

手から電気的なものが出る。この電気をアンプに送るようにイメージすると、アンプの電源が入った。

「やった!」

「音は大丈夫?」

ギュイーン♪

うさぎがアンプに繋いだギターを弾くと、ディストーションのかかったギターサウンドが爆音でその場を埋め尽くした。

「じゃぁ演ろう!」


♪聞いたことも見たこともない

どこかわからない場所にやってきた

わたしたち


魔法が使えることを知った今

ためらうことなんていらない!


I'll Be Back! I'll Be Back!

この扉を抜ければ

I'll Be Back! I'll Be Back!

わたしたちの故郷

I'll Be Back! I'll Be Back!

やっと帰れるんだ

I'll Be Back! I'll Be Back!

地球に♪


ありすたちは魔法の光に包まれ、次の瞬間、墜落した飛行機ごとロサンゼルス空港にいた。この超常現象が話題となり、ありすたちのバンド、ワンダーランズは一躍世界的なバンドになった。これにて一件落着である。ただ一人を除いては。


「あれ?ここどこ?」


地球にテレポートしてきたテコが目を丸くしている。


〜完〜

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バンドごと転移した異世界は、音楽で魔法が使える世界でした 元住吉菜々緒 @esper2000

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