第6話 ブレスが来ます!

「ここがあのドラゴンの巣ね」

準備を終えたワダランの一行は、早速ドラゴンの住む岩山にやってきた。

「おーい!ドラゴンさん!」

チェシャが大声を出してドラゴンを呼ぶ。

「入りますよー」

一行がドラゴンの巣にたどり着くと、そこは床一面に金銀宝石が散らばっていた。ドラゴンが光るものを集めるのは本当らしい。そして、その財宝のベッドの上に真っ赤なドラゴンが眠っていた。

「寝てるみたいですね」

「そうだな」

「起こしたら機嫌悪くなりそう」

「どうしようか?」

「あれは?機嫌よく起きる歌!」

「それだ!」


♪おはよう おはよう 起きる時間

気持ちの良い一日がはじまるよ

おはよう おはよう 背伸びして

深呼吸をすれば うれしいね♪


ワダランのメンバーは即興で伴奏を奏で、ありすもまた即興で歌を重ねた。それに呼応するかのように、ドラゴンもあくびをして立ち上がり、大きく伸びをして話しだした。

「なんの用だ?人間たちよ」

「ドラゴンさん、こんにちは。わたしたちはドワーフの街ウダウグからやってきました。宝があれば街を襲わないんですよね?」

ありすがドラゴンに語りかける。

「ほほう。宝を持ってきたというのか?」

「はい。これを御覧ください。この世界にはない宝だと思いますよ」

そう言って、うさぎがお菓子の缶を取り出し、うやうやしくフタを開けた。そこには、魔法でキラキラと光る大量のピックが入っていた。

「おおー!美しい宝だな!」

「お気に召しましたか?」

「うむ。こっちによこせ」

うさぎが缶を差し出すと、ドラゴンは顔を近づけ、口でその缶をくわえて持ち上げた。しかし、次の瞬間、ドラゴンは缶を放り出し、ピックが床に散らばった。

「これは、魔法の匂いがするな!」

(ギクッ!)

「我を騙したのか?!」

「いえ、そんなことは……」

言い訳をしようとするも、ドラゴンは口を開け、その奥に炎の光が見えた。

「ブレスが来ます!」

テコが叫ぶ。

♪炎が避けていく〜♪

とっさに歌の魔法を使い、ファイアブレスから身を守る。

ゴォーーーッ!

「熱ッ!」

しかし、魔法越しでも、ファイアブレスは火傷しそうなくらい熱かった。

「これ、やばいかも?」

「ちょ、ちょっと話を聞いてくださいよ!ドラゴンさん!」

「我を騙そうとする者には問答無用!」

スゥーーー

再びドラゴンはブレスを吐く準備に入った。

「これイケるかな?」

「なにそれ?」

「えい!」

チェシャがブレスの準備のために息を吸っているドラゴンの口に向けて、いくつもの緑色の小さな球を投げ入れた。

ゴォーーーー!

「熱ッ!」

「効かない?!」

「でもなんかスッキリする香りだよ」

「なにを投げたの?」

「ブレスケア」

チェシャが投げたのは小林製薬のブレスケアだった。たしかに、すこしスースーする感じはあったが、ドラゴンブレスの威力を削ぐことはできなかった。

「喉がスースーするぞ!」

ドラゴン本人はブレスケアの効果を感じているようだったが、すぐに次のブレスの準備に入った。

スゥーーーーー


♪ブレスケアはすごい

熱いドラゴンのブレスだって

ミントの香りの気持ち良い風に

変えてしまうんだよ♪


フワーーーーッ

ドラゴンの口から放たれたのは、爽やかなミントの香りの風だった。

「よし!魔法が効いたぞ!」

「むむむ!」

しかし、ブレスが使えないからと言ってドラゴンが弱いわけではない。爪もあれば牙もあるし、しっぽに当たってもただでは済まないはずだ。

「どうにか話を聞いてもらえるようにしないと!」

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