第5話 宝石が好きってカラスみたいなものなんじゃない?

「ごめんくださーい!」

ドワーフの住む山に着いたありすたちワダラン一行は、ドワーフたちの住む地下都市ウダウグに続くという洞窟の入り口を発見した。そこには二人のドワーフが立っていた。

「悪いがここを通すことはできない」

「どうしてですか?」

「今、ウダウグは大変な状況で、外部の人間を入れることができないのだ」

「なにがあったんですか?」

「ドラゴンは知っているだろう?つい先日、人間に化けたドラゴンがウダウグに侵入して、大暴れしてどっかに行ってしまったんだ」

どうもこの世界にもドラゴンが居るらしい。永遠の命を持ち、金銀や宝石のような光るものが大好きなようだ。

「それは大変でしたね」

「ああ。そしてあのドラゴンは、宝を持ってこなければ再びやってくると言っている。もちろん我らドワーフはドラゴンに宝を渡す気はさらさらない。だから今はここを通すわけにはいかないんだ」

「わかりました。わたしたちは、雷を操作する力が得られるポーションを探していて、ここならあると思ったんです。もし、街に入らずに手に入れられるのであれば、手に入れたいのですが……」

「うーん。いまウダウグは大変な状況だから、難しいかも知れないね」

「そうですか……では落ち着いた頃また来ます」

ありすたちは一旦、その場を離れることにした。


「ねぇ、どうしようか?」

うさぎが訊く。

「しばらくこの世界に厄介になるか、それともドラゴンをどうにかするか?」

「ドワーフさんたちが困っているんだから、なんとかしてあげたいよね。上手くいったら雷のポーションもタダで貰えるかもしれないし」

ありすは打算も交えてドラゴン退治に積極的だった。

「この世界のドラゴンって俺たちが相手できる強さなのか?」

ウォルラスは疑問を持っている。

「宝石が好きってカラスみたいなものなんじゃない?CDでも吊るしておけば入ってこないよ、きっと」

「さすがにもっと頭が良いんじゃない?」

チェシャの提案はすぐに却下されてしまった。

「宝を持っていけばいいんじゃないかな?」

「え?」

「だから宝が欲しいんでしょ?ドラゴンは。だから、ドラゴンの喜びそうなものを渡せばいいんだよ」

ひなたの考えはこうだ。飛行機に戻ればこの世界にはない珍しいもの、それでいて自分たちには価値のないものがあるはず。それをドラゴンに渡せば、ドワーフたちを襲撃する理由がなくなるということだった。

「なるほどねー」

「ありかも」


「これどうかなー?」

早速一行は墜落した飛行機に戻って使えそうなものを探した。ピックや自分たちのCD、交換用の弦なんかが候補に上がった。

「こんなので大丈夫かな?」

「プラスチックはこの世界になさそうだから、珍しがるかも?」

「たしかに〜」

「あ、魔法をかけたらどう?」

「ドラゴンが興味を持つように?」

「そう」

「ありじゃない?」


♪この世界にあるはずがない宝〜

別世界からもってきた宝〜


珍しくて新しい そんな宝がここにある

ドラゴンだって首ったけ

もう手放すことなんてできない♪


歌が魔法だということがわかれば、ありすたちはすでに魔法使いだった。こうして、魔法をかけたピックをダース単位で持って、ドラゴンの待つ山へ向かうのだった。

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