第3話 それは試してみる価値があるかも?
「すると君たちは別の世界から来たっていうこと?」
ワダランのメンバーと食卓についたテコが興味深そうに訊く。
「わからないけど、状況を総合的に判断するとそういうことになりそう」
「全然信じらんないんだけど!」
「だって魔法があるんだよ」
うさぎは冷静にこのトンデモな状況を理解しようとしているが、ひなたはいまだに混乱しているようだ。
ここは飛行機の墜落地点のすぐそばにあるテコの家だ。テコはここで両親と3人で暮らしているという。ありすたちは、テコの好意によって異世界ではじめての食事にありついたのだった。
「うわー、このお肉みたいなのすごいおいしーよ!」
チェシャは話をするよりも、異世界ではじめて見る食事に夢中だ。
「どれどれ?お、本当だ!牛とも豚とも鶏とも違う、なんの肉なんだ?」
ウォルラスは材料が気になるらしい。
「これはね、肉じゃなくてネネレの種よ」
テコのお母さんが言う。もちろんネネレが何なのかワダランの誰もわからない。
「えっと、野菜の一種ってことでいいのかしら?」
「野菜っていうより、木の実ね。それを潰して、焼いて固めるとこうなるの」
「「「へ〜」」」
ルマゴの食べ物は地球の食べ物と全く違っていて、ありすたちは驚きっぱなしだった。
「ところでこれからどうしようか?元の世界に戻れる方法ってあるのかしら?」
食べ物に関する驚きが一巡すると、ありすはワダラン一行の一番の問題について言及した。しかし、ルマゴの住人たちも異世界からの客を迎えるのは初めてで、ましてや、他の世界に行く方法なんて思いもよらなかった。
「でも、可能性はあるんじゃないかしら?」
うさぎは自分の思いつきを語りだした。
「だって、この世界には魔法があるじゃない?だから魔法を使えば戻れるんじゃないの?」
「おおーなるほどー!」
言われてみればその通りである。しかし、そのためにはこの世界での魔法について知る必要がある。
「この世界の魔法っていうのはね、起こりうることしか起こせないものなんだ。あの大きな乗り物の火を消したのだって、火が自然に消える可能性があったから消せたんだよ。しかも、可能性が低ければ低いほど、魔法もより強いものが必要になる。別の世界に行く可能性ってどれほどあるのだろうか?」
テコのお父さんが魔法で元の世界に帰れる可能性について教えてくれた。
「つまり、大魔法が必要ってこと?」
「簡単に言えばそういうことだな」
「魔法の強さってどうやって決まるの?」
「それは、魔法を使う人の人数や能力、使う魔道具の質、そして何より連携が大切なんだよ」
「魔導具って楽器のことでしょう?わたしたちの楽器が使えるんじゃないかしら?そうしたら連携だって取りやすいだろうし」
といううさぎの提案を受け、みんなで飛行機に行ってみることにした。
じゃら〜ん♪
「アコギは全然使える」
「ドラムセットも大丈夫だぞ」
「遊び用に持ってきた鍵盤ハーモニカ、使えるかも〜」
「この電池駆動のミニアンプ使えば、エレキも行けるんじゃない?」
ギュイーン♪
ズンズクズンズクジャージャー♪
何の前触れもなく それは訪れた
何の前触れもなく 揺れて落ちていく
たどり着いたのは 知らない世界
帰り方はわからない
だけど絶対 帰ってみせる♪
グラグラ!ガガガッ!ドン!
?!
飛行機が揺れて主翼が落っこちてしまった。
「歌が魔法になってるんだ!」
「え?!ちょっとこれ下手なこと歌えないじゃん!」
「魔法はイメージを具現化するものなんだよ。イメージを言葉にして詠唱することで魔法になるんだ。でも、その魔導具が強力なのかも?」
テコが魔法について講釈を垂れる。
「だとしたら、地球へ戻るための歌を作ったらいいんじゃない?」
「本当はちゃんとしたアンプで演奏できたら、さらに良いんだけど」
「それは試してみる価値があるかも?」
少しだけ希望が見えてきた。
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