第2話 わたしたちにも魔法が使えるんだ!

「みんな!気をつけてね!」

不時着した飛行機から次々と降りるワダランのメンバーたちに、ありすが声をかける。

「あ、人がいるよ!」

ひなたが遠くにいる人影に気がついたようだ。

「あの人に聞けば救助を呼べるかもしれないな」

ウォルラスが冷静に言う。

「おーい、助けてくれー」

チェシャが相手まで絶対届かない気の抜けた声を手を振りながら出す。

「こっちに近づいてくるみたい」

その人物は、白いジャケットに身を包み、なにかを背負っている。

「すいません、あの、飛行機落っこちちゃったんですけど、電話も通じなくて困ってるんですよ」

「るマヷゴぞテこぶィカじめゾアえベユノピヱにとトミデやつッスね」

「?!」

「当然かも知れないけど、言葉が通じないみたい」

「困ったねー」

すると、白ジャケットの男は、背中に背負っていたものを下ろし、叩き出した。

♪トントントトントトントントントトトントン♪

「♪ぢせデぽバゆぴヱわデ〜♪」

「♪言葉が〜通じる〜よ〜♪」

「あれ?!歌の意味がわかる!」

最初は意味が分からなかった彼の歌の言葉が、いつの間にかわかるようになっていた。

「OK!これで話ができるね」

「日本語わかるんですか?」

「日本?それはわからないけど、言葉は通じるようにしたよ」

「どういうこと?」

意味がわからない。

「ん?なにが?」

「どうして言葉が通じるようになったの?」

「ああ、歌を歌ったからだよ」

「?」

「?」

「歌を歌うと、言葉が通じるようになるの?」

「そう」

「どうして?」

「どうしてかはわからないけど、そういうものでしょ?」

「いや、そんなこと聞いたこともない」

「まあまあ、細かいことはいいじゃないですか。とりあえず自己紹介をしましょう。僕はテコといいます。あなたたちは?」

「わたしはありすです」

「白井うさぎです」

「俺はウォルラスだ」

「アタシはひなた」

「ボクはチェシャだよ!」

それぞれ名前を名乗った。

「で、ここはどこなんですか?」

ありすが聞く。

「ここはルマゴという国だよ」

「ルマゴ?聞いたことがない。わたしたちはアメリカからブラジルに行こうと思って飛行機に乗っていたら、事故を起こしてしまって」

「飛行機?あの鉄の塊かい?」

「飛行機を知らない?」

「うん。それに君たちが来たところも、行き先も聞いたことがないよ」

「どういうこと?」

「これひょっとするとアレだよ、わたしたち、異世界に来ちゃったんじゃないの?ほら、魔法みたいなのもあったし!」

うさぎが突拍子もないことを言い出した。

「異世界?嘘でしょ?でも、そうとでも考えないと説明がつかないかも……」

ひなたが混乱しながらも、うさぎの意見に同調する。

「だとしたら、どうやって帰ったらいいのかしら……」

ありすが心配する。

ボンッ!

その時、ありすたちの後ろから爆発音が聞こえた。

「ヤバい!飛行機の燃料に引火したかも?」

「どうしよう?」

「ねぇテコくん、あの火を消すことってできない?」

「わかんないけど、やってみるよ」

♪トントントトントトントントントトトントン♪

「♪消えーろ消えろ、火よ消えろ♪」

「♪熱い光が冷めていく〜♪」

みるみるうちに火が小さくなっていく。

「よし、行けそう!」

「♪消えーろ消えろ、火よ消えろ♪」

ボンッ!

ところが、さらに燃料に引火したのか、別の爆発が起こった。

「ちょっと僕の力だけだと難しいかも知れないです。みなさんの力も貸してください」

「わたしたちの力?」

「そうです。一緒に歌いましょう」

「だってわたしたち、魔法なんて使ったことないよ」

「魔法?っていうのは、よくわかんないですけど、歌は歌えるんじゃないですか?」

「歌は、もちろん歌える!」

「じゃぁ一緒に!」

♪トントントトントトントントントトトントン♪


消えろ消えろ火よ消えろ

熱い光が冷めていく

昨日の晩のご飯を炊いた

熱い炎の仕事なら

昨日の晩のご飯を食べた

その日のうちに終わってる

消えろ消えろ火よ消えろ


6人の合唱と太鼓の音が、ルマゴの国の海岸線に広がった。その響きが飛行機から出る火と共鳴して、なだめ、そして、抑えていく。

「火が消えた!」

「やったー!」

「すごい!」

「わたしたちにも魔法が使えるんだ!」

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