第4話 ストーカー被害

 ちょうど、その頃、K警察署に、一人の女性が神妙な顔で入ってきた。彼女が向かったのは生活安全課。刑事課とは違った。一階で、生活安全課が何階なのかを確認し、三階であると分かると、正面にあるエレベータで上の階に向かった。K警察署というのは、昭和の頃に建てられたまま改装もされずに今に至っていることから、いたるところが老朽化しているようなところであった。

 廊下も狭いし、まるで、昔の市役所のようなところだった。市役所の方は新しい社屋になったことで、警察署も近いうちに改装しなければならないということも分かっていた。何と言っても、老朽化は避けて通れないことだからである。

 三階に上がると、それこそ市役所のように、受付が広がっていて、天井から、課の名前を書いたプラカードがぶら下がっている。生活安全課を探してみたが、見つからなかった。

「エレベータを降りた時に、この階の見取り図を見ておけばよかった」

 と思った。確かエレベータからすぐのところにあったのをチラッと見たが、降りた瞬間、これだけ解放された空間であれば、すぐに見つかるとタカをくくってしまっていたのだ。

 完全に自分の見込み違いだったわけだが、ここまで見つからないとさすがに仕方がない。受付のどこかに聞いてみるしかないと思い、ちょうど目の前にあった受付の女性に聞いた。

「あの、すみませんが、生活安全課というのは、どちらになるんでしょうか?」

 と恐る恐る聞いてみると、受付のお姉さんは、

「ああ、生活安全課でしたら、この奥に扉があります」

 と教えてくれた。

 なるほど、正面ばかりを見てしまっていれば分かるはずもない。言われたとおりに進んでいくと、正面に小さな扉があり、そこに、生活安全課と書かれていた。

「すみません」

 と言って、中に入ると、ベテランの婦警さんがいた。メガネをかけていて、こちらを振り返るなり、メガネの縁に触って、度を合わせているかのように、こちらを見たが、やはり度が合っていないのか、こちらを凝視するのが分かった。

「何でしょうか?」

 と、あたかも面倒臭そうにされてしまうと、聞いた方の彼女は思わず、億してしまった。

 他の人であれば、

――何て、横柄な態度を取るんだ。自分たちの税金で食っているくせに、もっと、市民のために仕事をしているという態度を示してくればいと、税金泥棒と思われるだろうよと感じるのではないか?

 と思うほどに、感じる人も少なくはないだろう。

 特に、ビクビクしているような女性からすれば、どの角度から見ても、睨まれているとしか思えないに違いない。

 すっかり、訪問者はビビッてしまったが、奥から一人の中年男性がやってきて、

「まあまあ、そんなに怯えないでいいですよ。私がお話を伺いましょう。どうぞ、こちらへ」

 と言って、奥の簡易応接に案内してくれた。

 簡易というのは、扉や壁があるわけでもない解放された一角で、本棚が三方から迫ってきているので、少しくらいの声でも、表に聞こえる心配はなかった。

 こういうところを見ても、K警察署が、本当に老朽化していることが分かる光景であった。

 彼女は、警察署に入るのは、ほぼ初めてと言ってもいいかも知れない。一度だけ来たのは、結婚して名字と住所が変わった時、運転免許証の名義変更手続きにきたくらいだった。それ以前は、小学生の頃の社会見学として、警察署の見学という授業の一環としてきたくらいのものだった。

 その時は、一応、警察内部を歩いてみて回ったが、子供であったし、女の子だということもあり、さほど警察に興味がなかった。

 美術鑑賞で、絵に興味もないのに、全員授業の一環ということで中学の時に美術館に行ったことがあったが、あの時も、絵を横目に見ながら、ただ、通り過ぎて行っただけだったが、彼女は興味のないものに対しては、さっさと通り過ぎることにしていた。

――絵が好きな人はいいけど、好きでもないし、興味すらない人に対して、どうして強制的に授業と称して、行かなければいけないのか? 休みにしてくれた方がよほどいい――

 と思っていたのだ。

――学校というところは、どうしてそういう興味のない人間を巻き込むことをするんだ?

 と思っている。

 音楽会も、運動会だってそうだ。特に運動会など、何が楽しいのかとずっと思っていた。

「強制的にやりたくもないものをやらせるのが、教育というものなのか?」

 と思い、それまで好きだった学科も嫌いになり、一時期、学校が嫌いになったことがあった。登校拒否とまではいかないが、時々、何らかの理由をつけて、学校を休んでいた。

 時に、運動会や音楽会などは絶対に行かなかった。最初の頃は親も、

「どうしたんだい?」

 と言っていたが、すぐに嫌だからというのが分かったのだろう。

 親の方も、学校行事にウンザリしていたので、子供が行かないのであれば、自分も行かずに済むので、却ってよかったと思っていた。

 さすがに何度もそういうことがあると、学校から呼び出されることもあったが、親は別に気にしていない。

 学校から呼び出されて困ると思う親は、世間体を気にしたりする人が多いのだろうが、彼女の母親には、そんなものを気にする気持ちはこれっぽっちもなかった。

 呼び出されるのは、学校に行くのが面倒くさいというだけのことで、先生が何を言おうとも、別に心に響くわけでもないので、聞き流すだけでいいのだから、後ろめたさの欠片もないので、気が楽だった。

 逆に先生の方が理不尽な言い方をしてくれば、こっちも反撃をする用意くらいはしてあった、その時は、この時とばかりに、自分のストレス発散に、学校の先生を使えばいいというくらいに大きく構えていた。

 親子でそんな感じなので、学校というところは別に怖いところではなかった。彼女には友達もいないし、関わってくる人もいなかった。だから、苛められることもないし、ただ、学校に行っているだけでもいいと思うのだった。

 だが、さすがに、それだけではまったく面白くもない。だから、好きな学科は自分から勉強するようになった。それが、学校が嫌いになったことで、勉強する気にもならなかったのだが、でも、結局は、学校に来ても暇を持て余すだけなので、やっぱり、好きな科目の勉強はするようになった。

「どうせ、学校に来なくても、することがないのだから、暇を持て余すのはどこにいても同じことだ」

 と思った。

 学校にきて、好きな科目だけを勉強していればいい。好きでもない科目の時は、好きな科目を勉強すればいいのだ。最初は先生も、

「今は、国語の授業だぞ」

 と、社会の本を読んでいると、言われたものだが、彼女が無表情で先生の顔を見つめることで、先生はそれ以上何も言えなくなった。

 そしてそれ以降、その先生はもう何も言わなくなってきたのだった。

 そのうちに、先生からは愛想を尽かされてきたのが分かったが、別に成績が落ちているわけではないので、先生は文句を言えなくんった。確かに違う授業科目の本を読んでいるわけだが、勉強をしているわけなので、強くも言えない。さぞかし、先生をイライラさせたことだろう。

 自分の授業中に、他の科目の勉強をしているというのは、本来であれば、屈辱的なことだが、それを大っぴらに注意できない学校というのも、おかしなものだ。

「強制的な授業があるくせに、他の勉強をしていても、そこは怒ってはいけないという決まりでもあるのかしら?」

 と彼女は思っていた。

 そんな彼女は高校生になった頃から、性格が変わってきた。それまでは、少々のことを怖がったりはしないというような勝気な性格だったにも関わらず、高校生になってからというもの、急に臆病になったのだ。

 それは、高校二年生の頃のことだっただろうか、塾からの帰り道、バスを降りてから家まで、少し寂しいところを通るのだった。その道は、大人の男性でも気持ち悪く感じるほどの場所で、塾が終わるのが九時頃なので、それからの帰宅となると、バスを降りる時間は十時近くになっている。その頃には、サラリーマンなどの帰宅の時間を過ぎていて、遊んで帰ってくる人が混んでくるまでの間のちょっとした時間だった。

 何が怖いのかというと、街灯が中途半端の距離についていることで、足元から伸びる影がいくつもの放射状に広がっていて、まるで、タコかイカの足のように見えるのだった。

 歩いているうちに、その放射線状になった影が、自分の足を中心にぐるぐる回って見えてくるのだ。

 そのまわり方によって、大きくなったり小さくなったりと、急に自分の影なのに、それを分かっていながら、怖がってしまうのであった。

 自分の影なのに、自分以外の影も感じるようになってくると、どんどんと怖くなってきた。だが、それはこの場所を恐怖に感じるからという錯覚ではなく、本当に彼女を追いかけてくる人がいたようだ。

 そういうのが二、三日感じられるようになって、いよいよ錯覚ではないと思った時、彼女は思い切って、交番に駆け込んだ。

「どうしたんだい?」

 と言って、中年の警官g声を掛けてくれた。

「はあはあ」

 と、最初は何も言えずに呼吸を整えていると、警官も察してくれて、彼女が落ち着くのを黙って見ていてくれたのだ。

 その時感じたのが、

「学校の先生の一人でもいいから、これくらいの気を遣ってくれる人がいれば、それでよかったのに」

 と思うのだった。

 彼女は呼吸が落ち着いてくると、

「塾からの帰り道なんですけど、最近、誰かにつけられているような気がして怖いんです」

 と言った。

「最近、怪しい人もいるようなので、私たちも警戒を強めているんだけど、君はいつも同じ時間に帰宅するのかい?」

 と聞かれたので、

「塾の帰りはいつも同じ時間のバスです。だから、十時前くらいに近くのバス停につくんですよ」

 というと、

「じゃあ、そのくらいの時間に、なるべくその通りを警戒しておくようにすると、そういう輩は、誰か一人をターゲットにしているという人もいるけど、自分の行動パターンに合わせる形で相手よりも時間と場所というやつもいるので、何とも言えないんだけど、少なくとも、その時間に君の警護になるような時間を知っておくと、パトロールの強化にもなるからね」

 と言った。

「どちらのパターンが多いんですか?」

 と訊かれて、

「それはよく分からないんだけど、君は、毎日この時間なのかい?」

 と聞かれたが、

「いいえ、塾がある時だけなので、週に二階だけですね」

 というと、警官は、

「じゃあ、分かりやすいかも知れない。もし君が乗っていない曜日はすでに分かっているだろうから、君がいない時に、そういう怪しいやつがいれば、その男は君がターゲットではなく、その時間のその場所で誰でもいいということになるよね?」

 と言われた、

「確かにそうですね。もし、私をターゲットにしていて、その男が捕まると、私が逆恨みされる可能性はあると思うんだけど、私がターゲットでなければ、誰が通報したのかって分からないだろうから、少しは安心な気がするんですよね。やっぱり逆恨みって怖いじゃないですか。だから、怖い目に遭ったとしても、本当に通報しようと思う人は少ないと思うんですよ。それに相談に来ておいて、こう言っては失礼ですけど、警察がどこまで信用できるかというのは、一般市民からすれば、非常に意識するものですよね。犯人逮捕に協力したおかげで、自分がひどい目に遭うとかいうのは、本末転倒も甚だしいと言えるのではないしょうか?」

 と彼女は言った、

 その時は、それから怪しい男は現れることはなかったので、気のせいだったのかとも思ったし、

「警官が警備してくれているから、犯罪を未然に防げたのかも知れない」

 とも感じた。

 そもそも警察は検挙率を挙げるよりも、犯罪をいかに未然に防ぐことができたかということの方が重要である。

 ただ、犯人も捕まったわけではないので、不安が消えることはなかった。

「もし、あの男がまた私をターゲットにして狙ってきたらどうしよう?」

 と感じた。

 彼女が自分から交番に駆け込んだことで、犯行を起こしにくくなった。捕まることは怖いが、それ以上に精神的なストレスをどうしていいのかも問題である。

 彼女はそんな状況が、自分にとっての、

「負のスパイラル」

 ということを感じていたのだ。

 そのようなことを考えるようになった。

 その時はそれ以降何もなかったのでよかったのだが、今回は、実際の問題なので、交番ではなく、直接警察署にやってきたのだ。

 ちょうど、以前交番で話をした時、警官が、

「こちらから、K警察署の生活安全課の方に連絡は入れておきます」

 と言っていたのを聞いていたので、ストーカー被害などは、生活安全課であるということはわかっていた。

 警察署というところは、刑事課のイメージもあったが、刑事課のようにいつも事件で大変なところもあれば、総務部や広報課のような、切羽詰まったところでもない部署もあるので、一概に警察官が怖いものだということはいえないとは思っていた。

 刑事課というのは、刑事ドラマなどでしか見たことがないが、なるべくなら行きたくはないと思っている。

 ただ、生活安全課という部署は、言葉だけではどういうものを扱うのか分かりにくいので、一応下調べをしてきた。

 どうやら、「保安」と「防犯」の全般を担っているところのようで、少年犯罪、経済環境事犯、サイバー犯罪などを扱っているということである。もちろん、都道府県によって、その組織体系は違っているようだが、特に東京警視庁ではストーカー犯罪は、生活安全総務課というところで行っているということだ。そこには、家族への暴力、虐待と言った、ドメスティックバイオレンスも含まれているようで、同じ総務課の中には、女性安全対策室ということで、通称「さくらポリス」と呼ばれている部署もあるようで、かなりの広範囲に及んでいるようである。

「ところで、お嬢さんは、どういう用件で来られたんですかな? 私たち生活安全課というのは、結構幅の広い犯罪を扱っているので、まずそのあたりから伺いましょうか?」

 と、老練っぽい刑事に言われた。

 中年の刑事に見えたが、どうも、初老に近い雰囲気があり、おっとりしたその雰囲気は、気軽に話をできそうであるが、見た目頼りになるのかどうか、そのあたりが気になるところであった。

「実は、私、ストーカー被害に遭っているんです」

「ほう、それはどういう程度ですかな?」

「私は一人暮らしをしているんですが、マンションというよりもコーポのようなところなので、当然オートロックでもないんですが、ピンポンダッシュのような感じで、ブザーを鳴らすので出てみると、そこには誰もいないんですよ。最初は昼間で、数日に一度くらいだったんですが、そのうちに時間がどんどん遅くなっていって、真夜中などに、毎日のようにブザーが鳴って起こされるんです。この間は、バラの鉢植えが置かれていたりしたんです。その次はスズランでした」

 と彼女は言って、一つ溜息をついた。

「バラと、スズランですか……」

 と刑事がいうので、

「それが何か意味でもあるんですか?」

「わざわざそういうものを置いておくということは、相手にとって意味があるんでしょうね。バラには、実際に毒はないそうなんですが、棘に刺さると、そこから化膿したりするので、毒があると思われている。逆にスズランは、毒がなさそうに見えるけど、実際には猛毒があって、コンパラトキシンなどという有害物質ですね。どちらも美しい花ではありますが、肩や毒があるように見えて、実は存在しない。肩や、毒はなさそうに見えるけど、実際には猛毒の存在がある、特にスズランなどは、生けてあるその水を飲んだだけでも死に至ると言われるほどなんですよ。この人がどういう意味で、その二つを置いたのかは分かりませんが、毒という意味で考えると、何か、あなたへのメッセージのような気がします。同じ毒でも、植物、しかも、綺麗に咲く花というところが、私には気になるんですよ」

 と、刑事は言った。

「私には心当たりはないんですけどね。どっちにしても、その人の正体も顔も分からないからですね」

 と彼女は言った。

「他にもいろいろストーカー行為を受けていることはありますか?」

 と訊かれて、

「無言電話とか、この間は、数軒の店にデリバリーを頼んでいたらしく、何とか理由を説明して事なきを得たんですが、次第にエスカレートしていくんです。それで今回思い切って、ここに来ていたんです」

 というと、

「歩いていて、後ろからつけられているとかいうようなことはなかったですか?」

 と訊かれて、

「あったような気がします。でも、あくまでも気配なので、警察にいうわけにもいかないと思っていたんですよ」

 というと、

「そういう時は近くの交番に駆け込むのもいいかも知れないですね。自宅の近くの交番の位置はご存じですか?」

「ええ、分かっています。私は以前高校の時も、誰かにつけられている気がして、交番に駆け込んだことがあるので、交番の位置は把握しています」

 と彼女は言った。

「そうですか、とにかく話を訊いている限りでは、少ししつこいのと、陰湿な感じがするので、まずは、パトロールを強化しましょう。まずはあなたの家の近くをパトロール重点箇所に定めることにします。ひょっとすると、あなた以外にも被害に遭っている方がいるかも知れないので、その方も一緒に守る必要がありますからね。ただ一つ問題なのは、相手が誰だか分からないというところが問題ですね。今度、もしその男が現れた時は時間と場所を確認しておいてください。どこかの防犯カメラに映っている可能性がありますからね。そして、家の喘に何かが置かれている時雄、同じように書き留めておいてください。そのまま通報してくれても構いません。防犯カメラがどこかにあればいいんですけどね」

 と刑事は言った。

「分かりました。私もなるべく、防犯カメラの位置くらいは、自分が毎日利用する場所くらい確認しておこうと思います。あとで、私がよく立ち寄る場所を地図で示しておきますので、ご確認しておいてください」

 と、彼女は言った。

「そうそう、あなたのことも聞いておかなければいけませんね」

 と、順番が狂ってしまったことを思い出して、刑事が訊いてきた。

「私は、松下ゆいと言います。二十八歳になります。実は今度結婚するんですよ。婚約している状態ですね」

 というので、刑事も顔が少しほころんで、

「ほう、それはおめでとうございます。それなら、余計に憂いの目は切っておかないといけませんね」

 と言った。

「ええ、そうなんです」

 そこで、刑事はさらに訊ねてきた。

「あなたが、ストーカーを気になるようになったのは、婚約してからですか?」

 と言われて、

「ええ、婚約は、二か月前にしたんですが、ストーカーのような被害が気になるようになったのは、一月くらい前のことですね」

 ということであった。

「あなたは、婚約する前に誰か他の男性と付き合っていたとかいうことはないでしょうね?」

 と訊かれて、ゆいは初めて訝しく感じた。

「それは、二股とかそういう意味ですか?」

 と訊かれて、

「あっ、いいえ。そんなことはないと思いますが、念のために伺った次第です。お気を悪くされたのであればすみません」

 というではないか。

「私はそんなことはしていません、ただ、勝手に片想いをしていて、逆恨みのような感じであれば、分かりませんが」

 というと、

「さっきの、植物の話の陰湿さからすると、相手が勝手に思い込んでいるというパターンはあるかも知れませんね。もし、そうだとすると、少し厄介ですが、一度警察はお灸をすえておくと、案外と簡単に引き下がることも多いですよ。もっとも、その通りであればの話ですけどね」

 と刑事は言った。

「少し怖いですね」

 というので、

「じゃあ、GPS機能を警察でも見れるようにしてもかまいませんか? これはかなり個人の自由を制限するものなので、警察で行動監視もできるという意味で、お考えいただくこともできます。もちろん、すぐにとは言いません。エスカレートしてきてからであってもいいと思います。その時はこちらも、完全にあなたを守るようにしますので、検挙に繋がればいいと思います。あなたに取って一番いいのは、犯人が検挙されることですよね? いつこられるか分からないのをビクビクしていると、まともに生活できませんよね?」

 強制はしないということだが、少し躊躇もあった。

「あとですね。電話番号を警察で登録しておいて、その番号から着信があった時、その時、初めてGPS機能が働くというのはどうですか? これは、最悪の場合もそうていしてのことなのですが、もし、あなたがストーカーに追いかけられて、その場で隠れていたとして、声を出せない場合なども考慮しての方法になりますが、いかがでしょうか?」

 と言われた。

「それであれば、いいと思います」

 と、まずは、その登録をしておいて、ここからさらにエスカレートするようであれば、本当にGPS管理をお願いしようと思うのだった。

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