第一章 第三話
三話 『君と朝』
森をそのまま突っ切っていくと、研究所らしきものが見えた。
思ったより近かった。そしていら立ちが募っていた。
この研究所は『オーバーディオ』のものだからだ。
許せねぇ。もしかしたらいるかもしれん。俺の家族が。
剣に込めた力が強くなった。
森を出るといびつだけどきれいな家と、白く簡素な研究所があった。
「…たしか“研究所を壊す”ことが依頼だったよな。」
そう独り言を言って研究所のドアを蹴破った。
「お邪魔しまーす!」
「だ…誰だ!!」
中には変な機械につながれている少女と研究員がいた。
*****
もうどうだっていいや。朝日の入らないカーテンのかかった無機質な部屋でそう思った。
「おい!『ティアー・スノー』!ご飯を食え!」
…実の父とは思えない。そう考えながら不出来なご飯を食べた。
私はもう父の道具になっている。
この体は、私の母のスキルが混ざっている。
正直最悪だ。母が死んでから父は狂った。
私を道具として使い始めた。
もうどうなってもいい。
救いの手はもうないのだから…。
「お邪魔しまーす!」
という声とともに少し角の生えた青年が来た。
「だ…誰だ!」
希望に満ちてる…覚悟のこもった眼をしてる。何者なんだろう…?
*****
「あー。自己紹介?苦手なんだよなー。」
「さっさと名乗れ!」
「まあでも、お前に名乗る名なんて…。」
ねえよ。
(戦闘開始)
研究員はすぐさま
「いけ!スノー!」
と言って、女の子を差し出してきた。
研究員はクズばっかなのか?
しかしこの少女は強い。どうやら種族が雪女のようだ。
氷の雨で行動を制限して、隙あらば俺を凍らそうとしてくる。
「…くそっ。何とかしないと。防戦一方だ…。」
まて、この少女…泣いている?かすかに目元が凍っている。
この少女は…
「おい。お前はそこで見てろ。」
そう言いながら「ごめん。」とつぶやいて少女を端に投げた。
「そこのクソ研究員。俺と戦え。」
「ほほう!良いだろう。」
そういうと研究員は火炎放射器を用意した。ビビりすぎだろ。
すかさず懐へ入って、一振りで銃を落とした。
ひるんだところに二発、腕と顎を殴り、ぐらついた所を掴んだ。
その後、窓の方向へぶん投げた。クソ研究員の爽快な叫び声とともにガラスが割れ、ガラスに反射しながら朝日が差し込んだ。
「ほら。朝だぞ。」
感極まった少女はまた涙を流した。
「ありがとう…。」
そう言われた。
この子は、オーバーディオに恨みを持っていそうだな。覚悟をもって話しかけた。
「君、一緒にオーバーディオを壊しに行かない?」
そう誘うと少女はうなずいた。
少女と言っても、俺と同じくらいの年齢のようだ。
俺は君を見たとき、こう思った。
君といれば上手く行きそうと。
私はこの人を見たとき、
救われた気がした。
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