第三十四話「アメリカの大統領2」
「中国は危機的状況にあります。韓国の米軍基地で敵勢力が出現して危うく領土を失いかけた。それに日本人の密航者が多数中国に入ってきている。由々しき問題だ! 中国は国連軍主導による日本国の完全封鎖を進言する」
「自衛隊の主要部隊は全滅している。日本にモンスターを止める力はないことを考慮すればロシアも中国の意見に同意する。が、完全封鎖はやりすぎだ。なんびとたりとも日本から外へ出してはいけないことは分かる。北海道にはまだ多数の民間人が滞在している。ここに部隊を派兵し、治療薬が開発されるもしくは寄生者非寄生者を判別する方法を確立できるまで守る義務は世界各国にあるはずだ。ロシアにはその準備がある」
「乗っ取るつもりではありませんか?」
「それは貴国だろ? あぁそういえば負けたらしいな。鳥島は今は日本の領土か」
「喧嘩はやめろ。アメリカは本州四国九州のみ完全封鎖でいいと考えている。北海道と沖縄は限定的封鎖に留めるべきだ」
「完全封鎖にすると日本はもちろん各国も行き来することができなくなりますからー日本を自国のモノにしたい国々は困りますかー」
「沖縄には米軍が駐留している。それに米国人も多数いる。彼らが日本から出られなくなることは避けたいそれだけだ」
「へぇ」
アメリカは中国に対して経済制裁を実行している。日本から輸入できなくなったことによる部品などの不足によって輸出品を急遽国内消費に回した結果のことではあるが、国内向けの報復してますよというプロモーションの意味合いも含まれている。今はまだ良いが、時間が経過するごとにアメリカも損害を被ることにはなる。日本に輸出するはずだったものが溢れている。どこかに買い取ってもらわないとまずい。それに中国のアメリカに対する経済制裁も正直、痛い。
輸入品に頼り気味であった中国は今、すごく困っている。アメリカからは一応入ってきてはいるが少ない。日本からはなにも入ってこない。日本が持っていた技術を入手して同じものを国内で作る案は潰えた。中国のイライラは頂点に達している。
世界はアメリカ案とロシア案の一部の採用を決めた。ロシア軍を中核とする国連の部隊を北海道に派遣することになった。中国としては面白くないだろう。北はロシア。南はアメリカが統治する未来が訪れるかもしれないからだ。とはいえ戦争をする余裕はないはずだ。
ハンフリーズ基地への爆撃で爆弾の在庫に底が見えたと報告を受けた。このまま戦争をすればかなりのハンデを背負ってやることになってしまう。アメリカも満足に兵力を動かせないためそれでも拮抗するだろうが、おそらく中国経済のガタガタが障害となって勝利できない。運よく勝利をもぎ取ってもアメリカは核兵器を発射する。核戦争の始まりだ。アメリカは死なばもろとも的な考え方をする。それを理解している中国は奥歯を噛み締めてアメリカとロシアの意見に従った。
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