第二十九話「月城朱音7」

 しばらく経過して日が暮れ始めたとき、砲手がテントの外から声をかけてきた。


「食事の時間です」

「了解」

 ぐっすり安息を楽しんでいる涼風と双葉を起こしてしまうのは気が引けた私は藤宮を残して食事を取りに行くことにする。野外炊具1号(改)を使って支援隊の隊員たちがカレーを作っていた。おいしい匂いに釣られた民間人たちが笑顔で、列に並んでいる。美味い飯は大事だなと改めて思った私はひとりでに頷いた。


「手伝いますよ」

 戦車長が後ろから声をかけてきた。素直に頼むことにした私は戦車長のお盆にカレーの皿を二つ置いた。戦車長と一緒にテント群に続く道を歩く私は尋ねる。


「どんな戦いだったんだ?」

「埼玉防衛戦ですか」

「そうだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る