第二十三話「双葉琴里2」
朱音さんの隣に座っている藤宮の目が泳いでいる。あぁなにかしたんだなと分かった私はそれとなく訊いてみる。
じっと私に目を見つめられた藤宮が少し考えてから小声で伝える。
「演劇部から借りた小道具を持って、校舎裏の影からじぃいいと朱音の初恋相手を見ただけだよ」
「悪い男だったの?」
「いや、良いやつだったよ。でも渡したくなかった。分かるだろ?」
「分かる」
こつんと私は藤宮と拳を合わせた。一時間ほどインディアンポーカーを楽しむ。朱音さんと藤宮が再びオールを漕ぎ始めた。四時間ノンストップで進めて、かなりの距離を移動する。国立医療センターが見えてきた。
屋上にドクターヘリの姿を確認できる。
「都合よくパイロットがいた、なんてことないよな?」
「うん。絶対にありえない」
朱音さんの問いに藤宮が答えた。二人の自衛官は相談を始めた。
「だよなー。どうする?」
「シミュレーターのヘリなら操縦したことがある。このまま利根川を進んでもおそらくなにもないと思う。このチャンスをものにするしか助かる方法はないんじゃないかな」
「パソコンゲームだろ?」
「そう。でも最近のゲームはすごくリアル。私を信じてほしい」
「分かった。行こう」
映画なら素人が操縦してもご都合主義が発動して大丈夫な場合が多いけど。これはリアルだよ? ほんとうに大丈夫なのかな。不安だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます