第十九話「総理の独語」

 国民は二通りに分かれた。危機を察知して行動を開始する者と日常を失う事実を信じたくないあまりに生活を続ける者。現在進行形でモンスターの殺戮が続く群馬県でも後者が大半を占めた。誰も実際に目撃するまでは未知の存在に懐疑的だった。


 正直、懐疑的な状況は助かる。ひとたびパニックが発生すればあっという間に日本中に広まる。そうなれば警察も自衛隊もその対応で手一杯になってしまう。東京を守るにはモンスターそしてバケモノと全力で戦える環境を自衛隊に提供しなければならない。準備が整うまで情報は伏せる。東京に来る前に食い止められれば勝利だ。


 大の虫を生かして小の虫を殺す。時間のために犠牲になってもらおう。どっちみち俺の政治生命は終わりだ。ならば非道にもなれよう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る