第十五話「戦闘捜索救難員」

「急いで! パイロットが呑み込まれる」

 前哨基地から急行したUH‐60JA、二機がB‐2から緊急脱出したパイロットが着地した住宅街の一角に向かっている。UH‐60JAにはPJ、戦闘捜索救難員。撃墜もしくは事故によって墜落した機体から脱出したパイロットを救助および致命傷を負っていた場合は医療処置を行う米軍兵士が搭乗している。


「……止まって」

「どうした?」

「救助する。あそこの一軒家に向かって」

 ベイジュ系の外壁の二階建ての一軒家そのベランダに赤ん坊を抱えた女性が立っている。逃げ惑う人々を見て、どうしたんだろう? と疑問に思う表情をしている。

「パイロットの救助が先だ」

「二番機。パイロットの救助を一任する。我々は離脱して民間人の救助を行う」

『了解』

「責任は取らないぞ」

 離脱した一番機が一軒家の上空でホバリングする。私は懸垂下降(ラぺリング)してベランダに降り立った。

「タスケニキタ」

 私は片言の日本語で赤ん坊の母親に説明するが、急に米軍兵士が現れた状況に戸惑う母親は赤ん坊をぎゅっとして離れてしまう。時間がない。私は母親の腕をつかみ引き寄せた。落下しないように自分に固定してから相棒に引き上げろと指示を出した。

「ちょっとやめてください」

「アバレナイデアブナイ」

「夫、の……」

 自宅の庭からベランダまで駆け上がってきた母親の夫が心配そうに妻を眺める。夫の元へ返してと言おうとした母親は上空から見た、町の様子を目のあたりにして絶句する。モンスターが人間を襲っている現実だとは思いたくない光景が広がっている。


 



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