第十三話「高橋裕介」

「民間人の被害がないと考えられる封鎖中の山だとしても一帯を爆撃するこの選択はどうかしていると思います。機甲師団もしくは防空ミサイルを含む兵器群による防空陣地があるこれはありえません。よって山に潜んでいる敵は歩兵主体の空挺部隊もしくは特殊部隊になります。歩兵。つまり人間が相手のため、まったく強固ではありません。地対空ミサイルの発射拠点を一掃する。これなら爆撃も辛うじて納得できますが、歩兵に対して爆撃は選択ミスだと言わざるを得ません」


 俺の視界の先にある液晶画面に現場の映像が映る。巨大な空飛ぶ翼を眺める住民たちが我に返って走り出した。米軍は案外優しいところがあるらしい。危険を冒してわざわざ低空飛行をしている。住民たちを脅すためにやっているのだろう。動物的直観やばいに突き動かされて野次馬も数は少ないが一部のマスコミ関係者も山から離れるために走った。ひゃっほーいえいいえいと撮影しているのはYoYoTuberだけだ。マスコミのカメラマンは誤爆によって死ぬ可能性を受け入れて撮影に没頭している。命よりも仕事とは恐れ入る。


「エイリアンの噂がYoYoTube、SNSを通じて広まっていますが、高橋さんはあり得ると思いますか?」

「国際宇宙ステーションの一部だと言われている物体が落下した初期段階から米・中・露は不可解な行動をしています。今回の過剰攻撃を含め考えれば可能性はある、と言えますが、軍事ジャーナリストとしてわたしはありえないと答えます」

「……はい。今後はエイリアン説も視野に入れて報道を続けていきます。宇宙生物学の著書などを多数手掛けている作家、小野翔太おのしょうたさんが到着次第掘り下げていきます。現場の渡辺美香わたなべみかアナウンサー、爆撃機の様子を教えてください」

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