第十二話「テレビカメラマン1」
「こちら現場の公園です。具体的な説明もないまま在日米軍が占拠しました」
俺はテレビカメラマンだ。現場に急行して、アナウンサーの中継を撮影している。子供たちの憩いの場であった公園から遊具が撤去され、代わりに榴弾砲と迫撃砲が設置されている。作業をする米軍兵士の警護をそれとなく命じられた制服警官たちが防壁となってマスコミの躍起を食い止めている。警察の圧に怖じけない負けん気の強いうちのアナウンサーが突撃する。
「下がって。下がってください。ガス漏れの危険があります。立ち退いてください」
「警察はガス漏れの危険があると嘘をついて近隣住民を追い出しています。こんな非道が許されるのでしょうか」
「体育館が避難場所に指定されました。着きましたら市職員の指示に従ってください」
「この兵器はなんのために設置されたんですか! 答えてください!!」
「わかりません」
「あなたたちが守るべき市民に隠し事はやめてください。戦争ですか? 戦争なんですか? 専門家は中国の攻撃を示唆していますが、どうなんですか!」
「我々はただの警察官です。ほんとうにわからないんです」
「市民の命がかかっているんですよ! 答えてください」
「県警本部からガス漏れの危険があるから避難誘導をしてくださいと我々は命令を受けてやっています。それ以外のことはわかりません」
「Was the Chinese army invading?」
警察官の後ろで作業をする米軍兵士にうちのアナウンサーが質問する。
「……」
「無視されました。否定しないということは事実なんでしょうか。中国海警局による日本中国間の航路の封鎖。日本のEEZに展開する中国艦隊。戦争の予告をしていると話す専門家もいます。中国軍の目的は
自衛隊初の防衛出動、戦後初の隣国による日本侵攻。数百年に一度の周期で訪れる転換点が起きるかもしれないと沸き立つ新聞社テレビ局その他無数の雑誌記者たちが集まった、みなかみ町はお祭り騒ぎだ。住民たちはマスコミが発する音に嫌気がさしているが、一番迷惑だなと思っているのは土足で上がってくるYoYoTuberたちだ。米軍もうるさいが、戦場になるかもと報道で煽られ続けている住民たちは安心感がほしいと感じているため、米軍に対してはそこまで悪い印象を持っていない。
俺も住民なら米軍がいるって安心感がほしい。
「え? ……撃ちました! たった今、山? 山を攻撃しました! 軍事ジャーナリストの
アナウンサーが現場からスタジオにテレビ映りの権利を返却する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます