第十一話「前哨基地の指揮所で働く女性士官」
木更津駐屯地にある前哨基地の指揮所に緊迫した空気が流れている。
「全滅、しました」
私は重い口を開き報告する。
「……何体だ? 何体倒せた?」
「人型八体、動物型二十四体です。敵の総数は人型動物型含め二百。これにバケモノを含めれば七百という規模になると試算されています」
「四百二十名という尊い命を失って、たったの、弱音は終わってから、だな。すまない。敵は二種類確認されているんだな?」
「はい。モンスターとバケモノです。モンスターはバケモノに脳を奪われた人を含む動物の変異体だと研究者は言っています」
「モンスターに関する情報は伏せろ。士気に影響する」
「了解しました」
「敵はどこを目指して、登山をしている?」
「おそらく群馬県利根郡みなかみ町だと予測されます」
「市街地にくそどもが侵入する前に壊滅させる。市街地に侵入されれば爆撃も砲撃もできない。やれば大量虐殺者として語り継がれることになる。それは軍も政府も許容できない。分かっているな」
「はい」
私を含む士官たちは理解していた。砲兵隊と爆撃機の集団が敵勢力を叩けなければ最悪、自国民を連れて本国もしくは隣国に脱出するプランを米軍は選ばなければならない。すなわち日本の経済価値が喪失することを意味する。それは世界大恐慌。世界産業が直面する類を見ない大被害、軍事バランスの乱れ等々正気ではいられない事態にアメリカが奔走するということだ。地獄を味わいたくない米政府はマスコミをガン無視して大々的に攻勢を開始する。我々は自衛隊では止められないと考えている。
市街地に敵が入れば米軍は虐殺と自軍の被害を恐れて介入できない。市街戦ほど難しい戦いはない。人間相手でも苦戦する市街戦の相手がモンスターとバケモノになれば市民を守りながら戦うなど夢のまた夢だ。それでも介入する以上、守りながら戦う必要がある。自軍の被害は過去最高になる見込みだ。絶対に許容できない。
私は映像でモンスターを見たが、あれを相手に市民に優しい戦争はやりたくない。
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