第20話 迫る別れ
「リント、何とかして時間を稼げないか?」
エデルは自身の精霊が消滅したにも関わらず、平然としていた。
「何か策でもあるの?」
リントは聞くが、エデルは答えなかった。しかし、エデルの顔を見て、リントはエデルを信じる事にした。
合流したジェイドゥとジャイルは再び、エデル達に迫った。二人の攻撃はフロウとブラクが止めた。
「どれくらい時間が必要?」
リントの言葉にエデルは
「10分は必要だ。できるか?」
リントは頷いた。そして、再びジェイドゥとの戦いが始まった。一方、ジャイルは再び、死体を動かし始めた。しかし、相対するフロウとブラクは本気を出せずにいた。目の前にいるのは、長い時を過ごしてきた仲間の姿だったからだ。二人の不利な状況は続いていった。
「ジャイル、辞めろ!これ以上彼らを傷つけるな!」
付近に群がる死体の攻撃を交わしながらエデルは叫ぶ。それでもジャイルは止める事無く、加減の知らない力で死体を動かし続けていた。
そしてその時がきた。エデルは自身の中で何かが構築され、形を成した事を実感した。その瞬間エデルの表情は勝利を確信した笑みではなく、どこか悲しげだった。
「ジャイル!お前の行動は全て無意味に終わる!」
エデルはそう叫んだ。
「何を言っている。この状況をどうやって覆すつもりだ」
「皆が繋いでくれたこの方法でこの戦いを終わらせる」
そう言ったエデルは自身の心臓に刃を向け、迷う事無く突き刺した。突然の行動にその場の誰もがエデルを見ていた。
「エデル?何で?」
リントはジェイドゥに背を向け、エデルに駆け寄った。
「リント聞いてくれ」
エデルはその場に座り込み、リントの肩を強く掴んだ。リントは涙目になり、首を横に振っていた。その言葉を聞いてしまえば、それが最後になると予感していたからだった。
「すまない、こうするしかないんだ」
使役する精霊を失ったエデルは、この戦いに勝利しても守り人としての使命を果たせなくなる。つまり、遅かれ早かれエデルはこの世界から消える事になる。この戦いを終わらせ、心置きなく消滅するのも悪くない。しかし、この戦いの行方がわからない今、最善の策はこの禁断の方法を使う事だった。
「この先、いつ守り人が現れるかわからない。できるだけ長くこの世界を守ってほしい」
エデルはリントにそう願いを託した。
「僕一人だけでできないよ」
リントはそう答える。
「大丈夫。リントには強い仲間がいるだろう」
エデルの見つめる先にはフロウやブラクの姿があった。しかし、それだけでは無い。地球に住む彼らや、同盟を結ぶ魚人族もいる。
「この世界が崩壊しても神はリントを許してくれるさ」
エデルは微笑んだ。
「神が許さなくても俺達はリントを許すよ。だから、ね。」
エデルはそう言うと、ゆっくりと目を閉じた。その瞬間、エデルの身体は少しずつ崩壊が始まった。
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