第19話 未来の明暗
突然発生した眩い光。それは、燃え続ける大地に起きるはずのない雷だった。その雷はエデルとジャイルの間を正確に狙ったかのように落ちた。その影響でジャイルによって動かされていた死体の動きが止まった。
ジャイルは突然の落雷と機能の止まった死体によって、唖然としていた。ジュアはその隙を見逃さなかった。
「マールス!」
ジュアの呼びかけに、マールスは主であるエデルのもとに駆けつけた。
「主、聞いてくれ」
マールスはそう言うと、こう続けた。
「このままでは戦況は悪化する一方だ。我らの存在が主を引っ張ってしまう」
「何を言っているんだ?」
エデルの顔は段々と悲しみの色を浮かべていた。
「リントからこの未来を聞いた時から、我らは準備を進めていた」
その言葉にジュアが続く。
「主に刃を向ける事になった時、自ら消滅の道を行けるようにな」
ルナは途切れに言った。
「今までありがとう」
その言葉で全てを悟ったエデル。しかし、それはジャイルも同様だった。死体が動かせない今、自ら動き始めた。
時は遡り、未だにリント達はジェイドゥに苦戦していた。死の概念がない彼らをどうすればいいのか、解決策も見つかっていなかった。その時、突然の落雷があった。それを目撃したリントは妙な胸騒ぎがした。それまでよりも強い気迫を放ち、ジェイドゥに挑んでいった。突然の事でジェイドゥの動きに乱れが生じ、その隙を見計らいリントはエデルのもとに向かった。リントが何を考えているか理解は出来なかったが、フロウやブラクは道を切り開きながらリントと共に向かった。そして、その後をジェイドゥが追いかけていった。
ルナの傍に寄り添うジュアにジェイドゥが迫っていた。その時、駆けつけたリントが間に割って入り、ジャイルの攻撃を受け止めた。
「すまない、リント」
ジュアがそう言った。
「何が起きているんですか」
リントはジャイルの攻撃を受けながらそう言った。
「すまない、お別れだ」
ジュアの言葉を一瞬理解出来なかったリント。しかし、ジュアは言葉を続けた。
「マールス、やってくれ」
マールスはジュアの方を見て頷いた。
「駄目だ!こんな形で失いたくない」
エデルの言葉にリントは全てを悟った。しかし、リントの言葉もジュアやルナに届く事はなく、二人の身体は少しずつ光り始めた。
「後は頼んだぞ」
ジュアはその言葉を最期にルナと共に光の泡になって消えていった。一方、マールスも同様にその姿が消え始めていた。マールスはエデルに最後にこう言った。
「俺達が最後にできる主への忠誠だ。これは禁断の方法。使うかどうかは主が決めてくれ」
その後に続く言葉はエデルの耳元で囁いていた。
エデルの使役する精霊がこの時、全ていなくなってしまった。彼らは最期まで主であるエデルにその身を捧げた。リントが見た未来が着実に訪れていた。
戦いは未だに続いている。死の概念がない彼らを倒す方法はあるのか。そして、エデルに残された禁断の方法とは何か。この先の未来は明るいものになるのか、それとも暗いものになるのか。その答えはすぐそこまで迫っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます