第17話 ジャイルの理想の世界

ファーマの命が消えかけているこの時、ジャイルは守り人としての使命を放棄し、あろう事かエデル達と争い始めた。ファーマの次に消滅するのは恐らくジャイルであろう。その為、エデルはジャイルの行動に意味があるのか、理解できなかったのである。しかし、ジャイルは模索し続けある力を手に入れたのだった。

「もし、彼らのように魂だけになっても生き続ける事が可能になったとしたら、どう思いますか?」

ジャイルの言う彼らとはジェイドゥ達の事である。彼らには死の概念はなく、永久的に生き続けられる、と言われている。つまり、長い時を経てジャイルもそれが可能になったという事だった。

「ジャイル、お前は一生この世界に存在するつもりか?」

エデルが問うが、ジャイルの返事は違った。

「私は死を恐れていない。しかし、やらなければならない事の為、少しでも長く生き続けなければならない」

「やらなければいけない事?」

「そうです。私はこの世界の仕組みを変えたい。神の思うままに動く世界、その神から力を与えられし守り人の存在。全てを無に返したいのです」

ジャイルは守り人という存在、そしてその力を与えし神の存在を知った時、疑問をもった。何故、神が水からこの世界を守ろうとしないのか。そして、何故、「選ばれし者」になった人は否応なしに長い生を与えられ、使命を背負わなければならないのか。ジャイルはいつの頃からかこの世界を生まれ変わらせたいと望むようになっていた。守り人だけではなく神にさえ刃を向けようとしていた。


少しずつ仲間を集め、力を向上させていった。全ては順調に進んでいた。しかし、リントが現れた事にその流れは止まりつつあった。リントは守り人になってすぐに新たな能力を身に付け、その能力によって隠された事実を次々と明らかにしていった。守り人になれなかった白狼の件も。この先の未来、何の努力も無しに、守り人は新たな力を授かった状態で誕生するだろう。そうなる前に計画を早める必要があった。そして、運がジャイルに味方したのか、ファーマの命が消えようとしていた。やるなら今しかない、そう考えたジャイルはとうとう計画を実行したのだった。自ら手を下すことなく守り人が一人消えかけている。やるなら今しかない、そう考えたジャイルは次々と行動を起こし始めたのだった。


ジャイルの思惑を全て知ったエデルは自然と剣をジャイルに向けていた。しかし、ジャイルにはまだ話していない事実があった。

それは、エデルにとっても予想外の力だった。

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