第16話 開戦

そこは宇宙の片隅に存在する星フレムグリター。誕生してから絶える事なく大地が燃え続けているその星は、普通の人間であれば立ち入る事さえ不可能だった。奇しくも集結したのはリント、エデル、フロウとブラクを中心とした数名の白狼族と黒狼族だった。しかし、エデルの傍にはルナ、マールス、ジュアの姿もあった。あの未来は正確ではなかったのか。


リント達を待ち受けていたのは、ジャイルが集めた仲間達。人の姿をしている者、獣の姿をしている者、霧のように漂っている者、様々だった。そして、両者の戦いの火蓋は切って落とされた。数だけで言えば、ジャイル側が有利だった。しかし、守り人としての使命を果たし続けてきたリントを始め、彼らは果敢に挑んでいった。


その様子を見ていたジャイルとジェイドゥは動き始めた。先に攻撃を仕掛けたのはジェイドゥだった。ジェイドゥの一撃は大地を二つに分ける程だった。その為、エデルとリントはバラバラになり、リントの傍にはフロウとブラク、数人の白狼、黒狼の姿があった。エデルの傍には使役する三人の精霊の姿があった。


そしてジャイルはエデルの方へ、ジェイドゥはリントの方へと向かった。

ジェイドゥの底知れない強さを感じたリントは、少しだけ瞳が揺らいだ。そんなリントの様子など気にする事無く、ジェイドゥは攻撃を仕掛けてくる。フォローに入ろうとしたフロウとブラクはジャイルの仲間達によって困難を極めていた。リントの名前を叫び、何とか本来の力を発揮させようとしていた。


一方、リント達と別れてしまったエデル達の目の前にジャイルが姿を現した。

「エデルさん、お久しぶりですね」

ジャイルはいつもと変わらない口調でそう言った。

「お前、自分のした事がわかっているのか!」

エデルが怒りを顕にするが、ジャイルは淡々と答えていた。

「勿論です。これが私の長年の夢でしたからね」

近くにいたジュアも声を荒らげる。

「神に選ばれ、長い時を共に戦ってきた主を裏切るつもりか!」

ジャイルは大きな声で笑った。

「裏切る?もともと仲間だなんて思っていませんよ」

「何故、今なんだ」

エデルが問う。

「それは、ファーマさんが消滅しかけている今、という事ですか?」

まるでエデル達をからかっているかのようだった。

「ファーマさんの寿命が近い事は何となく察していましたからね。丁度良かったんですよ」

「お前の命だっていつまで続くかわからない。こんな事は無意味だとは思わないのか」

「意味は十分にありますよ」

自信に満ちた表情でジャイルはそう言うが、エデルはその言葉の意味が理解できなかった。

そしてその意味は、ジャイルの長年の夢と共に明らかになるのだった。

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