第12話 動き出す運命の歯車

リントがフロウとブラクに全てを伝えていた頃、エデルはファーマの屋敷に来ていた。ファーマから緊急の連絡が入った為だったが、過去にそんな急を要する何かは無くエデルは少しだけ不安になっていた。そして、二人はしばらくの間話し込んでいた。

その日以降、エデルはファーマの屋敷をよく訪れていた。ファーマの身に何かが起きたのか、エデルは上の空になる事が増え、その影響が周りに及び始めていた。


一方、ジャイルはファーマやエデルの様子を知ってか、密かに動き始めた。ジャイルが訪れたのは宇宙の最果てに存在する小さな星。その星を統治する人物はジャイルの謁見を受け入れた。

その人物は低い声で言った。

「お前のような奴がこんな場所に何用だ」

ジャイルは顔色一つ変えずこう答えた。

「目的は一つだけ、私と共に来ていただきたい」

「我が何者かわかった上でそう言っているのか?」

「ええ。闇の貴族にして、神から見捨てられた可哀想な王、ジェイドゥ・グレリオン」

ジェイドゥと呼ばれたその人物を含め、闇の貴族には死の概念がない。肉体が無くても魂だけが彷徨い生き続けるのだ。

「我とお前は正反対の存在のはず。何故我の力を欲するのか」

「私は端から正義の人間ではない。この世界を憎み、恨んできた。全てはこの世界を終わらせる為」

ジャイルの過去に何があったのか、それは知る由もない。しかし、ジャイルはこの世界を、守り人の存在そのものもこの世から抹消しようとしていた。しかし、寿命が決まっているジャイルは世界を手に入れても、それはほんの僅かな期間のみ。そこで似たような境遇で、神も恨むジェイドゥに白羽の矢がたったのだった。

「勝算はあるのか?」

ジェイドゥの言葉にジャイルは頷く。

「近いうちに守り人が一人消えます。何より私のこの力があれば勝利は確実です 」

二人はこの先について話し込んでいた。そんなジャイルを監視しているはずのエデルの精霊は姿を見せなかった。


精霊はどこに消えたのか。エデルは自身の精霊達に起こる変化にまだ気づいていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る