第11話 予知した未来
四柱の集結により、世界はバランスを保ち、平和が続いていた。しかし、四柱の一角である傀儡使いジャイルに生まれた疑惑。その疑惑は晴れる事なく、それでいて深まる事もなく五十年の月日が過ぎた。
リントはグリスルプスに自身の屋敷を建てた。余程、この場所が気に入ったのだろう。しかし、理由はそれだけではない。白狼、黒狼にジャイルが再度接触してくる可能性があったのだ。何を企んでいるか分からない為、関係が疑わしい場所には特に警戒を強めていた。
そんなある日、いつもと変わらない朝を迎えるはずだったリントに異変が起きていた。額には汗が滲み、呼吸が乱れ、かなり動揺していた。久しく見ていなかった未来を見たのか、その日以降リントの様子は徐々に変わっていった。その変化に気づいたのは、近くで暮らすフロウやブラク達だ。二人は毎日のようにリントを問い詰める。しかし、リントは一向に話そうとはしなかった。両者の駆け引きはしばらくの間続き、先に負けたのはリントだった。そして二人にこの数日で見たある未来について話し始めた。
気がつくとリントは見た事も無い場所に立っていた。空は曇り、大地は燃え続けていた。こんな環境の為か一つの植物も生えておらず、生物も存在しない。
そんな場所にいつの間にか怒号が飛び交っていた。辺りを見るとフロウやブラク達が何者かと戦っている。そんなリントの目の前には、今までに感じた事の無い気配を持つ人物が立っていた。その人物はリントに刃を向け、殺しにかかってきた。
戦いは長きに渡り続いていたが、戦況はほとんど変わっていなかった。常に攻撃を繰り出し隙を与えないその人物に、リントは苦戦を強いられていた。そんな時、リントを呼ぶ声が辺りに響いた。
場面が変わると、先程までの光景では無かった。リントの目に映っていたのは、二人の人物。一人は心臓から血を流し、既に戦える状態では無かった。しかし、もう一人の人物は、気にする事も無く膝をつく彼に近づいていった。
草木が揺れ、暖かな光の中リントは目を覚ました。リントの体には傷が残り、手に残るあの感触もそのままだった。周りにはフロウやブラクがいる。そして、リント達を見守るように大きな樹がそこにはあった。
リントはフロウとブラクにこれが近いうちに訪れる未来だと説明した。
「やはりジャイルが何かを企んでいるのは間違い無かったな」
ブラクはそう言った。その未来にはリント達の他にジャイルやエデルの姿があった。この五十年、一切動きを見せなかった為、にわかには信じ難い話し始めただった。しかし、未来で見たジャイルの行動は、リント達を的に回すものばかりだった。
ジャイルに気をとられていた三人はある事実に気づいていなかった。それは、戦いの時には姿を見せるエデルの精霊達が現れなかった事、そして麻珠使いであるファーマがこの役目を放棄した事。この二つが指す意味とは何だろうか。それは、徐々に現れ始める。
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