第10話 疑惑と新たな事実

彼についての記憶がエデルから消されていた事。それを可能にするのはただ一人、傀儡使いジャイルであった。もともと傀儡使いは、守り人に接触した者の記憶を操作したり、新たな記憶に書き換える事が可能だった。ジャイルにどのような意図があるかは分からない。それでも、疑惑を持つのには十分な出来事だった。


もう一つの疑問も残る。何故彼はジャイルを含めた守り人の存在を忘れる事なく、関わりが持てたのか。その答えはリント自身もよく知っていた。それは、当時の守り人から力を分け与えられた為。しかし、その力を宿していないフロウやブラク達もリントやエデルの姿を認識した。この事から、白狼族、黒狼族共にもとからその素質があった、ということだった。


二つの種族がこの世界に誕生した時から、彼らは守り人になる可能性が高かった。しかし、彼らは閉鎖的な種族、彼がジャイルと出会うまでその事実が明るみに出ることはなかった。


一つの結論に至った所で、彼について知ることができた両族。それはつまり、争い続ける意味が完全に無くなった事を意味していた。勿論、仲間の中にはすぐに受け入れる事は出来ないだろう。それでも、徐々に両族はリント達守り人と深く関わっていく事になる。


一方、常にリント達の行動を見ていたジャイルは事実が明るみになった事で、焦りと怒りに満ちていた。ジャイルの怒りの矛先はリントにのみ向けられていた。

怒りが少し静まった頃、彼はある場所へと向かっていった。


エデルとリントは一旦、グリスルプスを後にした。ジャイルに直接問いただそうにも証拠もなく、彼の意図も分からなかった。その為、この情報をファーマと共有し、今後の行動を模索する事になった。

その結果、ジャイルには常に監視をつけることになった。その役目を担ったのは、エデルの精霊達であった。精霊達なら、ジャイルに気づかれる事もなく、常に監視が可能だった為だった。


更に、リントはしばらくの間グリスルプスに住む事になった。守り人が関わった事で争いが起き、多くの犠牲を出してしまった事への贖罪のつもりで、彼らに出来る限りの協力を申し出たのであった。

また、情報や技術を共有し、より良い生活になるよう援助も行った。つまり、守り人と白狼、黒狼との間には同盟関係が結ばれたのであった。


時が経ってもジャイルは大きな動きを見せない。ジャイルも相当警戒しているようで、守り人同士に亀裂が生じたまま五十年の時が過ぎた。

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