第3話 地球に潜む影(後編)

ファーマと連絡が途絶えた直後、エデルはすぐにファーマの所へ向かおうとしていた。しかし、戦闘経験の浅いリントを客船に残すべきか、答えを出せずにいた。一方、リントは海面の方を見つめたまま、何かを探していた。その様子を見ていたエデルはリントに近づき聞いた。

「さっきから何を気にしているんだ?」

リントは少し躊躇う様子を見せたが、こう答えた。

「気のせいかもしれないけど、海から助けを求める声が聞こえるんだ」

突然の告白にエデルは戸惑いの表情を見せた。

その直後、穏やかだった海面が大きく荒れだした。状況が飲み込めない中、海面にはいくつもの小さな渦ができていた。

「まずいな」

エデルはそう呟いた。

「リント、今も声が聞こえるか?」

エデルに聞かれたリントは首を横に振った。その会話の最中にも渦は徐々に大きくなっていた。エデルはある一つの推測に全てを賭けた。

「リント、今からファーマの所へ向かえ。」

「僕一人ですか?」

リントは不安そうな目でエデルに言った。エデルはリントを安心させるかのように微笑んだ。

「俺達が援護するし、今のリントなら大丈夫だ」

リントはその言葉の意味が理解できなかった。しかし、迷っている時間はなかった。リントは覚悟を決めたようだったら、


リントと共に海に入ったエデル達。やはり、そこには既に多くの魚人がいた。覚悟を決めたはずのリントの手は少しだけ震えていた。そんなリントを安心させるかのように、エデル達はファーマがいるであろう方向の魚人らを蹴散らしていった。どれだけ心強い存在なのだろうか。リントはその姿で落ち着きを取り戻していった。そして、エデル達の力を借り、ファーマの所へと急いでいった。


「このまま故郷に帰還する、その考えはないのか?」

魚人らの攻撃を受けながらファーマは瀧翔に聞く。しかし、瀧翔にはその気は全くないようだった。

「そもそも、何故、未だに名乗らぬ者の言葉に従わなければならないんだ?」

話し合いも進まず、戦いの終わりも見えていなかった。その時、魚人らの統制が乱れ始めた。それは徐々に近づくリントの気配を感じていたからだった。

何とか魚人らを薙ぎ払いながら、ファーマのもとへ辿り着いたリント。

「リント、大丈夫?」

ファーマに聞かれたリントは呼吸を整えながら頷いた。

「船の方はどうなっているの?」

リントは客船の周囲にできた渦と、その渦を消す為にエデル達が戦っている事など全てを話した。

「また一人増えたな。お前も我の邪魔をするのか?」

瀧翔はリントに向かってそう言った。

「あいつは?」

そう言ったリントにファーマは答えた。

「あいつが今回の件の親玉だ。一筋縄ではいかないよ」

リントは瀧翔に向き直り、剣を握り直した。


そんなリントに近づく小さな影があった。しかし、その気配に誰も気づいていなかった。そのお陰でその影はリントのもとに辿り着く事ができたのだった。

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