文化祭の小さな恋物語

弥生

文化祭の小さな恋物語

教室で 静かな彼の イヤホンは

何を流すか 気になる朝に


文化祭 クールな彼は 黙々と

はしゃぐでもなく 準備をしてる


真夏日に 買い出しなんて 嫌だよね

なら私がと 無理して笑う


照りつける 暑さに目眩 厳しくて

不意に影落ち 「持つよ」と言われ


涼しげな 首筋に汗 流れ落ち

来てくれたんだ 実感が湧き


ありがとう 目線落として 言えたけど

反応見れず 俯き歩く


もう少し 一緒にいたい 願っても

行きより早く 学校につく


裏方に 回ったけれど 悪くない

支える役目 一人じゃないと


後夜祭 片付けのため 残ってる

さりげないのに 優しさじわり


こんなにも 距離は近くて こんなにも

言葉が詰まる 時よ止まって


「私、あの」 彼が手を止め こちら向く

「最後まで、その、 あり、ありがとう」


噛んでるし ただのお礼だ! 意気地無し!

顔も真っ赤で 必死過ぎるし!


ささやかに ほんと小さく 彼笑う

「不器用だよな 損しやすいし」


八重歯なの 知らなかったな……ではなくて!

「損してないよ 得してるもの!」


眉あげて「後片付けを やらされて?」

意地悪な声 意地悪な彼


見てるだけ だった君との やりとりに

一緒の時が 過ごせるなんて


くつくつと 「声出てるから」 彼笑い

「そんな好きなら 付き合ってみる?」


「はひ!」なんて 気の抜けた声 出しちゃって

思わず彼は 吹き出すなんて


帰り道 隣の彼の イヤホンは

この曲流す 知れた夕暮れ


また明日 くしゃりと髪を 撫でられた

ピコンとライン 『よろしく彼女』





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文化祭の小さな恋物語 弥生 @chikira

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