第11話
予想は当たらずも遠からずってとこかな。
俺の視線の先には、 主人公と青の浴衣姿の美亜。それから、もう1人のヒロインがいた。
あれは、小悪魔系後輩ヒロインの小春だな。彼女もピンク色の浴衣を来ていた。
でも、もう1人のヒロインがいない。頭脳明晰、身体能力お化けの生徒会長。
おかしいなあ。生徒会長の方にもイベントあるはずなんだが。
近づいてみるか。
バレる心配はない。何故なら狐のお面を付けているから。
『あれ?会長どこいったか知らない?』
『さあ?それより、ほっといて私とデートしましょうよぉ』
後輩は主人公の腕に抱きつく。
主人公は困ったような表情で笑っている。
でも、どこか焦っているようだった。
確か会長のイベントは、会長がはぐれてナンパされているところを助けるってやつだったはず。
今、はぐれてるとこなんだうけど、場所が分からないのか。
くそ、探しに行けよ。でも、そうなれば美亜と後輩とはぐれるからな。
仕方ねぇ、俺が少し探して誘導するか。
俺は人混みの波に潜った。
◇◆◇◆◇◆
「なあ、ちょっとだけだから」
「いえ、お連れがいますので」
「誰もいないじゃん」
「……はぐれただけです」
「だったら一緒に探してあげるから」
「結構です」
あ、いた。朱色の浴衣を羽織っている。それから屋台の裏に大学生ぐらいの男二人に囲まれていた。
うお、イベント始まってんじゃん。
会長は万能で何でもできる。でも、それ故頼ることができずに、ここで危ない目に遭う。
そこを主人公が助けて、会長がこの人なら頼ってもいいんだってなるんだよな。
もう、始まってるけど。
「いいから来いって!」
おい、もうそろ来ないとイベントミスるぞ!
「きゃっ!」
男の一人が会長の手を無理やり掴む。
はあ、さすがにもう間に合わないか。仕方ない、ここから離れるか。
「や、止めなさい!」
「きゃははっ、止めないって」
ごめんな。俺には関係ないから。後で主人公がアフターケアしてくれるだろうし。
諦めろ。ヒロインの使命ってな。
…………。
「止めろ」
「あ?」
「急に出てきて誰だよ?」
会長の手を掴む男の手首を握る。
「……俺は……狐仮面だ」
「あ?」
「ふざけてんのか?手ぇ離せや!」
手を掴まれてる男が無理やり蹴って来る。
あっぶね!
俺はギリギリ躱す。
冷や汗かいたー。さて、こっちも反撃行きますか!
格闘技経験あるのかって?
ないよ。喧嘩もしたことないし。
でも、こっちには奥の手がある。
「助けて、会長!」
隣にいる会長だ。
「え?い、今の流れはあなたが……っ!と、というより私が会長なのどうして!?」
「今はそんなことどうでもいいでしょ!やっちゃってください!」
「え、も、もう!」
会長が男の脳天に踵を振り下ろした。
男が地面に倒れる。
そして、すぐさま二人目。結果は一人目と同様。
浴衣なのに凄いこと。
「ふぅ、助かったぁ」
「あ、あの、ありが……いえ、あなた何も……?」
会長が困惑している。
まあ、確かに何もしてないわ。俺いらなかったよな?
つか、会長一人で解決できたんだし、このイベント事態必要なかったんじゃ……?
「じゃ、俺はこれで」
「ま、待ちなさい!あなたは誰ですか?」
「狐仮面です」
「本名を言いなさい。というか、その仮面も外しなさい」
「嫌です」
俺と会長の無言の戦いが始まった。
『ここか?』
「この声は……」
奥から主人公の声が聞こえてきた。
もうそろ去らないとまずい。
「あっ」
後ろから会長の小さな声が。
「俺はダメですけど、彼は頼っても大丈夫ですよ」
思わぬ形でイベントを無茶苦茶にしてしまったお詫びだ。
これで、幾分か主人公への好感度が上がるはず。
如月のせいだからな。感情までは支配されてないんだっけ。ヒロインだから仕方ないなんて思えねえよ。
俺はその場から去り、美亜を探した。
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