第5話

「ふぁー、おはよー」


 教室に入り隣の遥人に挨拶をする。


「おー、眠そうだな」


「ゲームしてたら5時だった。2時間しか寝てない」


「その時間なら寝ない方が良かったんじゃね?」


 かもなー。

 頭が重い。


「これ、無理だわ。保健室行ってくる」


「何しに来たんだよ。まあ、行ってら」


 遥人のツッコミを背に俺は教室を出た。


 保健室には誰もいなかったので勝手にベッドを借りることに。

 あー、瞼が落ちる。



◆◇◆◇◆◇



「……ん」


 眩しい光が目に刺さり、目が覚める。


 どこ?


 俺は確か学校に行って眠かったから保健室に……あ、保健室か。


「おはよう」


「ッ!?」


 隣から急に声を掛けられて心臓が一瞬止まった。

 隣を見れば、誰かが座っていた。


「え、え?誰……すか?」


 黒髪を首もと辺りで切り揃え、切れ長の目。

 口元は上品に少し上がって、足を組んで優雅に本を読んでいた。


 女?いや、でもズボンだし男か?

 いやいや、女子でもズボン履いてる子いるし。


 胸は……。

 胸では判断できませんでした。


 声はどちらとも取れる。


「な、名前は?」


 性別を聞くのもあれだし。名前聞けば分かるでしょ。


「僕の?如月きさらぎゆうだよ」


 んんんんんんんっ!!

 名前ですら判断できない!!

 どっちなんだい!


「アハハっ!」


 突然、彼、いや彼女か?如月さんが笑い出した。

 お腹を抱えてこれでもかと言う程笑っている。


「な、何が可笑しいんだよ!」


「い、いやっ、皆僕の名前聞いてそんな顔するんだよ!でも、君のは特に面白い!」


 失礼じゃね?


「つか、自覚あんのかよ」


「まあね」


 それなら、性別言ってほしいんだけど……。


「アハハ、分かんないよねぇ」


 少し落ち着いたのか、如月さんは目の縁の雫を指で拭き取る。


「……」


「……」


「……」


「……え?性別言わないの?」


 流れ的に言う流れだったよね!?


「アハハハハハっ!」


 如月さんはまたもや笑い出した。

 笑いすぎて涙出てる。


 何かムカつく。


「ごめんごめん、からかいすぎたよ。まあ、性別はどっちでもいいじゃないか」


「まあ、いいけど」


 でも、ここまで来たら気になるっていうか。


「あ!つか、何でここにいたんだよ!!」


 やべ、忘れるところだった。

 如月さんと俺は今が初対面。見ず知らずの人の寝顔の隣で本読むとか、どういうこと?


「はあ、楽しかったし教えてあげようかな。まあ、君も知ってるっぽいし」


 如月さんの表情が一変して真面目な表情に切り替わる。


「初めまして。僕は如月悠」


 いや、それはさっき聞い――


「この世界を知る人だよ」

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