第2話

「おはよー」


 美亜と別れて次の日。

 登校していると、目の前に親友の遥人が一人歩いていたので声をかける。


「あれ?お前が一人で登校って珍しいなあ」


 黒髪マッシュの185cmの高身長イケメン。バスケ部のスタメンでモテる。モテるんだが主人公には負ける。

 主人公は異様な程にモテるんだよな。主人公補正ってやつか。


 遥人とは中一からの親友だ。


「まあね。これからは一人だぞ」


「お?とうとう別れたのか?」


 遥人がニヤニヤ面白おかしく言う。


「とうとうってなんだよ?まあその通りなんだけどな」


「……は?」


 遥人が立ち止まりアホみたいな表情を晒す。


「おーい、何してんだ?早く行くぞー」


 アホ面なのにイケメンなのが腹立つ。


「ぁ、いやいや、待てよ!別れたってどういうことだよッ!」


 遥人が俺に詰め寄って来る。


「いやあ、昨日別れよって言われた」


「フラれたのか?」


「ああ」


 俺はひとつ頷いてみせる。


「はあ、やっぱりな」


 遥人が勝手に納得する。


「おい、やっぱりってなんだよ?」


 ちょっと失礼じゃね?


「お前の隣にいる佐伯さん、いつも不安そうな表情をしてたからな」


「嘘つけ。いつも笑顔だったじゃねぇか」


 美亜は常に笑顔で周囲を笑顔にさせるような子だ。

 そういう設定ヒロインなんだ。


「お前に向けてはな」


「はあ?」


 意味がわからん。つか、何知ったように言ってんだよ。俺以上に美亜のことを知ってる奴なんかいないってのに。


「まあ、わからんのならいいけど」


 遥人が何故か投げやりに会話を終わらせる。


「お前も、もう少し自分からアタックすればよかったのに。お前変なとこで恥ずかしがるよな」


 遥人が呆れたようにため息をつく。


「……まあ、汚したくなかったんだよ」


 いつかは寝取られる。

 それを記憶から消さない限り、俺は美亜と向き合えないだろう。

 だって途中で裏切られるのだから。実際に昨日フラれたし。

 まあ、でも美亜が嫌いってわけでもない。

 だから、美亜が海翔と付き合う時に、美亜が引け目なく付き合えるようにな。


「美亜が俺以外の奴と付き合う時に、罪悪感を抱かせないように」


 遥人が押し黙る。

 ……あれ?少し暗くなった?


「……お前なりに思っていたんだな。でもさ、何で別れる前提なんだよ」


「……あー、まあ明らかに釣り合ってないじゃん?学年一の美少女だぞ?」


 そういう設定だなんて言えない。

 俺は笑って誤魔化した。


「ん?」


 後ろに誰かの気配がした。

 でも、振り返っても誰もいなかった。

 気のせいか。

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