第1話

「お待たせっ」


 彰人と別れてから私は校門に足を運んだ。

 そこには、私を待つ男の子がいた。


「待ってないよ。それで、どうだった?」


 彼の優しい声が耳を撫でる。

 黒髪のセンターパート、小顔でどのパーツも整っていて、180の高身長。さらには、サッカー部のエースと、スポーツもできる。

 学園一のイケメンと呼ばれていて、よく告白されているのを見る。


 彰人なんかと違う。


 それに、彼は彰人とは違って手を繋いだりハグをしたりしてくれる。

 彰人は、3年ぐらい付き合っていたのに手すら繋いでくれなかった。


 たぶん、彰人は初めから私のことなんて好きじゃなかったんだ。

 私とはただの遊びだったんだ。


 告白された時は嬉しかった。

 ずっと好きだったから。


 でも、今は嫌い。


 今は彼、海翔が好き。


 今年、同じクラスになってから仲良くなって、彰人のことを相談したことから始まった。

 気晴らしに一緒に出掛けると楽しかった。それからだんだん惹かれていった。


 どうしようもないほど大好き。


「ちゃんと別れたよ」


 海翔に報告する。

 海翔の表情はみるみるうちに笑顔になっていく。


「これで、ちゃんと付き合えるね、美亜」


「うん!」


 海翔の笑顔につい私の頬も綻ぶ。


 私と海翔はそれから手を繋いで帰路に着いた。



◇◆◇◆◇◆



「家までありがとう、海翔」


「美亜は彼女なんだから当然だろ?」


 なんてことないように告げる。優しい。

 それに、ちゃんと会話してくれる。


 彰人なんて登下校一緒なのにずっと無言。私が話しかけても素っ気かった。


 やっぱり、別れて良かったんだ。


「ありがとう。大好きっ!」


 家に入る前に、海翔にハグをする。


「俺も大好きだよ、美亜。じゃあまた後でな」


 あぁ、海翔が大好きと言ってくれるだけで、胸が満たされる。


「うん!また後でね!」


 最近は夜電話をするのが日課になっている。

 海翔の優しい声が聞けて毎日幸せだな。


 私は海翔の笑顔を見て家に入った。



◇◆◇◆◇◆



「クハハッ、やっぱりちょろいなぁ」


 人影の無い裏道。

 一人の男の声が響く。


「あんまタイプじゃねえけど、身体は良いからなあ。適当に攻略して、あと二人攻略したら抱いて捨てるか」


 その声はとても醜くく、おぞましいものだった。

 そして、彼、海翔の表情は見る影もなく醜悪に歪んでいた。


「最高だなァ、この世界は」

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