幼馴染みの彼女が主人公に寝取られた。まあ、ずっと前から知ってたんだけどね。
猫丸
プロローグ
下の方から生徒の帰る声が聞こえてくる。
運動部の掛け声も響き渡り、こちらの閑静を強調する。
沈もうとする太陽をバックに黒髪の長髪の少女が俺に向き合う。
「話ってなにかな、美亜」
彼女は、俺の幼馴染みであり彼女の
肩まで伸びる黒の長髪。透き通る黒眼。雪のように白い肌。あどけなさを残す童顔。主張のある身体。
誰に聞いても美少女だと答えるだろう。
事実、彼女は学年一の美少女だと言われている。
そんな彼女は真剣な表情で俺を見つめていた。
「…わからないの?」
聞き慣れた綺麗なソプラノ声が耳を撫でる。
「わかんないなあ」
俺はとぼける。
「そう。じゃあ言うよ?
美亜の口からきっぱりと告げられる。
「…ぇ?ど、どうして!?」
俺は予想外の言葉に慌てる、ふりをする。
「私たち合わないよ。だって、私たち付き合ってからまだ一度も手を繋いだことないじゃん。もう付き合って3年だよ?」
「そ、それは…」
動揺した表情を見せる。
「どうせ、私のこと好きじゃなかったんでしょ?もういいよ。今まで付き合わせてごめんね」
「そ、そんな」
「それに、もう彼氏がいるの。その彼氏は手も繋いでくれるし、もうハグもしたんだ」
「……ぇ?」
俺の喉から情けない声が漏れる。
「今までありがとう。さようなら、彰人」
美亜は俺の横を通りすぎて屋上から出ていった。
下からは活気のある声が聞こえ、こちらの閑静を強調する。
1人残された俺は……
「よっしゃぁぁぁぁああああッッ!!!」
1人残された俺は、その場で寝転び喜びのままに叫んだ。
「やっと解放された……っ!このクソゲーにっ!!」
長かった。
中二の夏にこの世界の真実に気づいて、美亜と付き合って、たった今、高二の4月にやっと別れられた。
「これで、自由に恋愛できる」
俺の胸は達成感で満ち溢れていた。
◇◆◇◆◇◆◇
この世界はゲームだ。
『禁断の恋しちゃおっ』
略してキンコイ。
そんなふざけたタイトルなんだが、内容もクソだった。
主人公の
それがこのゲームの醍醐味だ。
俺は、
寝取られる原因は彼女にそっけない態度を取っていたから。
それは彰人照れ屋だったからで決して美亜のことは嫌いではなかった。
でも、美亜はそれを勘違いして、主人公を選ぶ。
その一連の流れを知った俺は、筋書き通りの行動をした。
そして、今日無事フラれた。
ここからだ。
俺の脇役ムーブは終わりだ。
俺は自由に恋をするんだ。
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