2-3

 僕は裏の森を抜け、北部にキジーナと共に進みながら雑談をしている。魔力は念のため温存するため、飛行はしていない。


「タダヒサってお墓に書いてあった名前だよね。お爺さんかな?」


「かもしれませんね! 南部と北部も鬼ヶ国の領土になるかも」


「えー、じゃあキジーナ北部の女王宜しくね」


「え、嫌です!」


「キジーナも出世には興味ないんだね」


「いや、そういうわけではないんですが……とにかく嫌です!」


 森を抜け、広い荒野のような場所に出ると、隊列を組んだ兵隊の最前列に、若いながらも一際目立つ剣士が乗馬していた。やはり一目見てわかったがお爺さんだった。


「キジーナ、やっぱりお爺さんだ!」


「わあ、感動の再会ですね!」


「お爺さーん!!」


ボクはキジーナと離れないように肩車をして、手を振りながら走った。


「待て待て待て!! とまれ!! 俺のどこがお爺さんなんだ! 俺はミミール王直属部隊隊長タダヒサっておい! 止まれ!!」


「お爺さーん!」


「はじめまして、雉のキジーナです!」


「タダヒサ隊長、危険です! 全軍で突撃しましょう!」


 隣に居た女剣士がお爺さんに慌てて声をかけた。顔も体も武装で見えないが、なんだか懐かしい声をしている。


「ならん! あんな2人の子供に全軍突撃なんてしたら剣士の恥だ」


「しかし」


「ミユキは俺に過保護だぞ」


「それはタダヒサ隊長です、なんで私だけこんな重装備なんですか!」


「怪我したら危ないだろ! おい、止まれ! 頼む一旦そこで止まれ、じゃないと斬るぞ!」


 ミミール王国の精鋭と聞いていたが、おそらくあそこで夫婦漫才をしている重装備の女剣士はお婆さんだ。

 僕はとりあえず立ち止まった。すでに10mほどの目の前にいる。


「お婆さんだよね? 顔を見せて!」


「誰がお婆さんだー!! 私はまだ24だ!!」


 お爺さんより厳重に守られた兜を外し、ミユキと呼ばれていたお婆さんが顔を見せてくれた。ミユキはお墓に彫られていた名前だ。そして顔を見てハッキリとわかった。


「やっぱりお婆さんだ! おばあさーん!」


「ひ、ひどい! 顔をしっかり見た上でお婆さんだなんて。タダヒサ隊長、私そんなに老けてますか?」


「いや、まったくだ、今日も可愛いぞ。あと危ないから兜を被ってろって、うわー!!」


 目の前まで近づいていた僕とキジーナを見てお爺さんは叫んだ。僕は抱きつきたい気持ちを必死で抑えて、ウズウズとしていた。


「止まれと言っただろうが!」


「止まったよ」


「近すぎるんだよ! それに本当にお前ら2人だけか? サアル国王からの宣戦布告は通達されてるんだよな?」


「うん」


「お前達2人が、鬼ヶ国から捕虜にされてる奴隷か?」


「捕虜? 家族だよ」


「人間の子供2人を戦争の火種に利用するために王族にしたのは事実か……やはり鬼だな。もう良い、お前達に危害は加えぬ。必ずサアル国に送り届けるので抵抗するな。我々は王命に従い、このまま鬼ヶ国を挟撃する」


「それはダメ」


「はあ? 何故だ、もう洗脳されているのか?」


「洗脳? 美味しいご飯と綺麗な部屋はあるよ」


「たぶらかされたか……」


「そうとも言えるかも」


「桃太郎さま、口論に弱すぎます」


「やっぱり?!」


 困った。このままだと進軍されてしまう。でもお爺さんとお婆さんとは戦いたくない。


「キジーナ、ボクに魔法をかけて」


「宜しいので?」


「うん。そしたらルビリンみたいに諦めてくれるかも」


「おい、何言ってるんだ。無抵抗じゃないならお前達を斬らなくちゃいけなく__」


「【金剛の糸】」


 キジーナがボクに魔法をかけると、体の周りが金色に輝いた。肩車されているキジーナのメイド服スカートがめくれそうになり、手で押さえているようだ。

 お爺さんとお婆さんは瞬時に距離を取り、顔色を変えて抜剣した。


「ね、戦うの辞めようよ」


「……全軍、突撃!!」


「なんでー?!」










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桃太郎無双 君のためなら生きられる。 @konntesutoouboyou

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