梅雨入の排卵日

佐野瑞季

梅雨入の排卵日

春驟雨セクサロイドに宿る自我


愚痴五分三十円で聞く田螺


制服を売りて過去の吾殺す春


花曇ニケの素描の淡き影


麻酔より醒め遠雷を拾ふ耳


縫合糸抜く鉗子にも薄暑光


絶交は牡丹一輪崩るごと


ペディキュアの温き梅雨入の排卵日


夜鷹鳴くきさらぎ駅の忘れ傘


革命をポストに落とす桜桃忌


注射痕残る腕の蚊を払ふ


フラッシュモブの沈黙や栗の花


梅酒瓶空ける同棲最終日


手首まで甘く枇杷の実啜りけり


星涼しかつて深海なりし山


朝まだき蚊帳に横たふ希死念慮


蝶番軋む晩夏のオルゴール


友達の親友も居る秋祭


生返事マドラーもて突く檸檬


胎動の消えし朝餉の寒卵


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梅雨入の排卵日 佐野瑞季 @Mizuki_Sano

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