第3話 先生との逢瀬

 先生は、確かにひなたのことが好きだったようだ。

 最初は、

「教え子なので、相手が誰でも手を出してはいけない」

 という思いを強く抱いていた。

 それに、ひなたのような女の子は別に先生の好みではなかったようだ。だからこそ、ひなたが、

「先生、勉強教えてください」

 と言って、放課後いつも教室に残って先生に教えてもらっていたのも、

「教室だから」

 ということで、他の先生も、他の生徒も意識していなかったようだ。

 それがそのうちに、

「今度、先生のおうちに行っていいかしら?」

 とひなたがいうのを、さすがに先生も、

「それはちょっとまずいんじゃないかな? 勉強だったら、学校で見てあげるから」

 と言って拒否られたものを、いかにして先生の家に行くようになったのかというと、そこは先生の弱みを握ったふりをしたのだ。

 明らかな信憑性があったわけではないが、先生の行動をいつも授業中にいていれば、先生の男としての本音が見えてくる。

「先生はああいう子が好みなんだ」

 と、クラスの委員長の子にばかり視線を送っているのを見逃さなかった。

 先生を見ていれば見ているほど、その露骨さがハッキリしてきて、ある日、いつものように放課後授業の後に、

「先生は委員長が好きだって、皆に言いふらしちゃおうかな?」

 と今までにない小悪魔的な笑みを浮かべた。

 すると先生はあからさまに焦った顔になって、

「おいおい、何を言っているんだ。そんなことはない」

 と言って、必死に言い訳をしていたが、その様子がこれまたかわいいではないか。

 ひなたの中にS性があったというのは、自分でも分かっていなかったが、その時点でどちらが優位なのかということは決着したようだった。

 先生は困った顔をしていたが、次第にまんざらでもないようになってきた。ひなたは、それがなぜなのか、すぐには分からなかったが、それは、きっと先生がひなたのことを気になり始めた瞬間だったのではないだろうか。

 先生はツンデレ系の女の子が好きだったのだ。

 委員長のように澄ましたタイプの女性から、苛められたいというような感情を持っていたのかも知れない。だから、ひなたの小悪魔的な表情に、それまでひなたを相手に感じたことのなかったM性を自分に感じたのであろう。

 これはひなたが、

「自分にS性がある」

 と感じたことと、直接的に関係があるわけではないのだが、先生の方でも、自分たちの間に、もう一つの優位性が生まれたのを感じたのだ。

「学校では、先生と生徒という立場。そして学校を離れれば、男と女という立場、そこには、正反対の優位性が潜んでいる」

 というものだった。

 ひなたの方は、先生と生徒という立場の中に、男と女の関係が入り込んできたと考えているところが、先生との感情とのずれだったと言ってもいいだろう。

 学校においては、先生と生徒に変わりはなかった。お互いに意識しないようにしていたが、先生も生徒の顔をなるべく直視しないようにしていたのは、やはり女子高だからだろうか。

 先生から見つめられたと思った生徒は、その気はなくても、急にドキドキしてくるものだ。

「先生と生徒の関係なんて、ただの他人よ」

 と言っている女生徒ほど、男性教師を意識しているものである。

 女生徒の中には男というと、一番最初に思い浮かぶのは父親であろう。クラスに男子はいないので、他の学校の男子と付き合ってでもいない限り、父親がイメージされるに違いない。

 男性教師も当然、男性として意識することになるのだが、

「先生と生徒」

 という関係は、少女漫画の世界の中だけのことのように思っておかないと、嵌ってしまうと、まずいことになるのは分かっていた。

 学校を退学になるのは当然のことで、近所からも白い目で見られたりするだろうし、肩身の狭い思いをするくらいなら、誰も知らないところに引っ越すなどということもありえるだろう。

 当然、父親の仕事もあるので、簡単にはいかない。母親は娘を庇うだろうし、そうなると、夫婦関係もガタガタになってしまい、家庭崩壊への道をまっしぐらということになる。

 厄介なのはその時の生徒の気持ちである。まだ先生のことが好きだったりすると、思春期の一直線な考えが、何をしでかすか分からない。自分でも制御できないくらいになり、

「先生と駆け落ち」

 などということにもなりかねない。

 先生が彼女のことを真剣に好きだった場合は、駆け落ちなどもあるだろうが、先生の方が遊びであれば、先生が迎えに来てくれることもない。

 ただ、先生の方が悲惨なのかも知れない。

 学校を辞めなければいけなくなるだろうし、

「生徒に手を出した先生」

 ということになり、教職から追放されるということにもなりかねない。

 もっと最悪な場合は、女生徒が妊娠でもした場合は、もう二人だけの問題ではない。家族や学校、教育委員会などもひっくるめた問題になるというものだ。

 そうなってくると、すでに個人の気持ちなど関係がなくなってくる。

 先生か女生徒のどちらかが、

「妊娠という既成事実を作り上げれば、まわりも渋々認めてくれる」

 などという甘い考えを持っていたりすれば、さらに話がややこしくなる。

 先生の側にそんな気持ちの人はいないと思うが、生徒の方が先生を好きすぎて、そこまでの非常手段に訴えたとすれば、彼女の精神状態も問題にしなければいけない。

 当然、カウンセリングの対象になるかも知れないし、世の中はそんなに甘いものではないということを彼女だけではなく、まわりにも知らしめておかなければ、同じようなことが再発することにもなる。それだけ大きな問題だということである。

 生徒が先生に迫るというのが、一番考えられることであるが、事態が発覚すれば、まず最初に疑われるのは、先生が生徒を誘惑したかどうかということである。

 対処しなければならない学校側は、まずそのあたりの真意を確かめる必要がある。もし先生が誘惑したのだとすれば、先生をクビにしたくらいでは収まらない。学校関係者にも処分の対象になることは必至である。

 だが、先生が悪くないとすれば、問題の生徒をどのように処分するかということだ。妊娠の有無も問題になるが、妊娠していない場合は、密かに他の学校に転校させて、ある程度外部に漏れないようにするという方法もあるが、下手に退学処分にでもして、彼女が非行に走れば、退学になった理由を警察や教育委員会から責められるのではないだろうか。

 そうなると、生徒の人生も先生の人生も破滅でしかない。家族まで破滅してしまうと、取り返しのつかないことになる。そういう意味で、先生は生徒に手を出すことは決してしてはいけないのだと、先生の方の頭にはあった。

 それでも、生徒が勉強ということであるが、家に来るようになると、学校と違って、ついつい甘い考えが先生の頭の中をよぎってしまう。

 まるで従姉妹の子が遊びにでも来たかのような感覚で、肉親のような感情が生まれてくるのは、ひょっとすると、私服だからだろうか?

 制服の方が危ない感情を抱くことになりかねないと分かっているだけに、制服を着ていないことで、自分の警戒心が緩んでしまっていることに、先生は気付いていないのかも知れない。

 ひなたも、その思いがあってか、わざと先生の家には私服で行くようになったのだ。

 ひなたは、大人ぶっていたので、香水もしっかりとつけていった。ひなたが好きな香水は柑橘系のもので、ミカンやレモンは本当はあまり好きではないのだが、香水は柑橘系をつけるようにしていた。

 食べ物としては、甘いものが好きだった。食欲をそそるものは確かに匂いなので、甘い匂いが好きなはずなのに、甘い匂いの香水はつけようとはしなかった。

 理由は二つあった。

 一つは、柑橘系の匂いが、汗と混ざっても、きつくないからである。甘い香りだと汗と匂いが混じってしまうと、気持ち悪い臭いになってしまい、耐えられないからだ、柑橘系であれば、匂いが混ざることもなく、匂いが変わることもない。だから、ひなたは自分の部屋も柑橘系の匂いにしていた。

 もう一つは、甘い匂いの香水は、よく母親がしていたからである。バラの香りの香水を好んでいていて、ひなたが小学生の頃の参観日であったり、家庭訪問の時は必ずバラの香りだった。表に出かける時もバラの香りが多く、それ以外の時も甘い香りが多かった。

 その頃はただ、バラの香りが嫌いだった。なぜ嫌いなのか理由が分からなかった。汗の匂いと混ざっているということを理解できなかったので、単純に、バラの香水は母親の匂いで、近くに行くと、嫌な匂いがするという意識だけだったのだ。

 これは、実際には気づきにくいものなのだが、人にとっての悪臭は、発生源となっている人には気づきにくいものだ。何しろ自分が発散させているのだから、分かりにくいのも当然である。

 腋臭であったり、餃子を食べた時など、本人は分からない。もちろん、自分にとって何も感じない臭いが人にとっての悪臭だったりするのは、よくあることで、

「どういう匂いだったら、人に悪臭だと感じさせないのだろう?」

 と思っていると、行き着いたのが柑橘系の香りだったのだ。

 それほどきつい匂いではないのだが、それでいて、他の匂いと混ざり合うことのないような匂いを模索した。やはり、女の子としてのエチケットだという思いと、先生を不快な気分にさせたくないという気持ち。そして、何よりも、男性の性欲を刺激する匂いということでも、柑橘系がよかった。柑橘系は相手が感じているのと同じ匂いを同じ感覚で嗅ぐことができるという意味で、ひなたにも性欲が湧いてくる。少し汗が混じってきたくらいから一気に身体が反応してくるという媚薬に似た効果があるのではないかというほどに感じていた。

 最初の頃は先生の部屋で愛し合っていたが、さすがに、完全防音ではないので、声や音が漏れることが気になってしまった。ひなたは、

「これもプレイの一環よ」

 と言っていたが、先生はさすがにそうもいかない。

 公園のようなところでひなたが待っていると、そこに車で現れた先生を見つけ、ひなたはその車に乗り込んでいくのだった。

 二人ともサングラスをしたり、帽子を被ったりして、変装していた。先生の部屋に変装も何もせずに通っていたのがまるでウソのようだ、後から思うと、よく何もなかったものだと思うほど、ゾッとしていた。

 それだけに、待ち合わせ時点からまわりを気にしながら、変装をしているのに、車に乗り込むところから、注意深かったりする。まるで芸能人カップルが、芸能記者に追われているかのような注意の仕方だった。

 車に乗り込んでしまえば、後は先生の運転する車で、ホテルにそのまま入るだけだった。

 休みの日だけのデートなので、結構いい部屋を先生は借りてくれた。ホテル時代もグレードが高く、部屋も豪華で、何よりもお風呂の広い部屋を好むひなたの気持ちを察してくれた。

 表との間の窓にも、木の扉が挟まっているような、いかにもラブホというような部屋ではなく、大きな扉に遮光カーテンが引いてあるというオシャレな部屋だった。こんなところにも先生の心遣いがあるのだと思うと嬉しくなった。その日一日を、先生と二人で過ごすのが嬉しくて、ひなたは前の日にお弁当を作っておいたのだ。それを冷蔵庫で冷やしておいて、当日持ってくる。先生はそのお弁当をいたく気に入ってくれたようで、

「本当に嬉しい」

 と言って、いつも残さずに食べてくれる。

「普段、学校では、学食のパンだったり、デリバリーのお弁当などばかりなので、手作りお弁当なんて、本当に憧れていたんだよ」

 というと、

「そう言ってくれると嬉しいわ。このお部屋もとっても気に入っているの。でもね、私は実は先生のお部屋大好きなのよ。どうしてだと思う?」

 と聞くと、

「どうしてなんだい?」

「それはね、先生のお部屋に行った時、いつもコーヒーを淹れてくれるでしょう? 私はあの匂いがとても好きなの。コーヒーの匂いって、香水などの匂いのように、あたかも、匂ってくださいという意味のように、相手を刺激するものではなく、漂っている香りが香ばしくて、その匂いは、強くもなく弱くもなく、自然に鼻腔を刺激してくるものなのね。香水の匂いは目を瞑れば淫靡な光景が浮かんでくるけど、コーヒーの香りは、目を瞑ればというよりも、自然と目を閉じていたというような、時間が掛かる無条件反射のようなものだって気がするのよ」

 とひなたがいうと、

「そうだね、香水の匂いに反応するのが、条件反射だということになるのかな?」

 と言って、先生はひなたの身体を、クンクンと匂った。

「いやだ、先生。恥ずかしいわよ」

 と言って、はにかんで見せたが、その時、ツンとした匂いが先生の鼻腔を刺激していたようだ。

「あっ、先生」

 と思わず声を出した。

 その時はすでに、先生の鼻息は荒くなっていて、先生のスイッチを入れてしまったことに気が付いた。

 柑橘系の匂いが先生を刺激したのか、それとも、ひなたが、恥ずかしいと感じたことで、先生に対しての思いが匂いとなって表に出てきたのを、先生が感じ取ったのか、もう、先生の欲望が収まることはなさそうだった。

 なし崩し的ではあったが、そんなプレイもひなたは嫌いではなかった。最近の先生はスイッチが急激に入ると、アブノーマルな抱き方をするのだった。もう抑えることができなくなってしまったのを誰よりも先生が知っている。ひなたにも分かっていると感じているのだろうが、それでも、その思いを変に加速させないようにするために、ひなたに対して何も考えないようにさせようと思っているようだった。

 ひなたは、最初は、

「もう、先生ったら」

 と甘えたような声で、窘めているようだったが、次第に何も言わなくなる。

 その代わり、息が絶え絶えになって、先生にすべてをゆだねる気分にさせられるのだ。お互いに汗をしっかりと掻いていて、この時とばかりに、柑橘系の匂いが、二人の間の興奮を最高潮に持っていくのだった。

 汗を掻きながら、その汗がほとばしるようにお互いを貪っている。甘い吐息が漏れるひなたに、先生の声は切なげだった。

 部屋は湿気を帯びていて、遮光カーテンが少し揺れて、表の明かりが軽く差し込んでくるようだ。

 その時に見えるひなたの顔が可愛らしいと先生は思った。そして可愛らしいと思った次の瞬間に、

「何て綺麗なんだ」

 と感じた。

 セーラー服姿の愛らしさとは違った雰囲気が妖艶さを醸しだすのだが、その雰囲気は、明らかに目力によるものだった。

「彼女は、俺を見上げるように見つめてくれる」

 態度だけを見ると、どこか小悪魔的で見下しているのではないかと思える雰囲気なのだが、決して上から目線ではない。下から先生を見つめていて、そこがひなたの魅力なのだと先生は感じた。

 すると、先生の腕に急に力が入った。

「痛い。どうしたの? 先生」

 と言って、それまでの甘い雰囲気はいったん途切れてしまった。

 自分がその雰囲気を壊してしまったことに気づいた先生は後悔を抱いて、

「あっ、ごめん。ひなたの顔を見ていると、急にやるせない気持ちになってきたんだ」

 という先生に対して、

「どういうことなんですか?」

 とひなたがいうと、

「ひなたの顔を見ているとね。急に怖くなってきたんだ。何か悔しいような気がしてきたというか、気のせいなんだろうけどね」

 と先生がいうと、ひなたは、キョトンとした表情をした。

 その表情が一種のあざとさを見せつけているようで、

「ひなたが、僕だけのものだということは分かっているつもりなんだけど、ひなたが僕を見つめてくれているその表情を知っているのは、本当にこの僕だけなんだろうかって、急に怖くなるんだ。もちろん、ひなたがそんな顔をするのは、僕にだけだよね?」

 というと、

「何言ってるのよ。先生だけに決まっているじゃない」

「ひなたのその上目遣いな表情、さらに、下から見上げた時の、物欲しそうな顔。僕にはとても切なく感じるんだ。それを他の誰にも渡したくない。ひなたのことを好きになればなるほど、余計にそんな気持ちになってくるんだ」

 と先生がいうと、

「ひなたに嫉妬してくれているのね。嬉しい。私先生に嫉妬されていると思うと、身体が熱くなるの。もっともっと、先生を癒してあげたいと思うのよ」

 と、ひなたは言ったが、実際には、sの言葉の裏に、S性が潜んでいることを、先生は分かっているだろうか。

 ひなたの方でも、先生を話したくないという思いが強い。そのためにはある程度、自分のことを引き付けておきたい気持ちになることが、先生を焦らすということに繋がるのだ。SMの関係というのは、お互いの変質的な好奇心を満たすだけではなく、相手を自分にいかにつなぎとめておくことができるかという気持ちの表れでもあるのだろう。

「ひなたは先生のもの」

 と言って、自分のことをもの扱いにするというのも、先生の自尊心を高めようという気持ちがあるからではないだろうか。

 先生の方でも、

「君は僕のものだ」

 と口では言いながらも、これ以上ないというくらいに、オンナとしてのひなたを愛しているのだ。

 オンナというものは決してものではない。これ以上ないというくらいに感情が入り込んだ恋愛対象であり、

「自分を犠牲にしてでも、この人だけは」

 という気持ちは、SM関係から生まれる場合もあるのだと、先生は考えていた。

 先生は大学時代、一度SM関係について研究したことがあった。好きになった女性がM女であり、先生をやたらと拘束することを楽しんでいるようだった。

 プレイとしても、凌辱系が好きなようで、相手の女に、恥ずかしい言葉を言わせることを楽しみにしていた。

 だが、その彼女とも、結構すぐに別れたのだ。

「あなたとは、趣味が合わない」

 と言われたのだが、先生には何が合わないのか、まったく見当がつかなかった。

 それ以降は、好きになって付き合った女の子は皆ノーマルだったので、頭の中からSMのことは半分消えかかっているそんな時に現れたのが、ひなただったのだ。

 ひなたは、先生のことが好きな気持ちに変わりはないが、その気持ちが最初の頃に感じた思いと同じなのかどうか、分からなくなってきた。最初の頃は純愛を好んでいたはずんだったのに、付き合い始めれば、まったく違った感情になった。

「身体を重ねるのは、あくまでも気持ちの確認のようなものでしかないんだわ」

 と思っていたはずなのに、一度身体を重ねてしまうと、

「そうよ、私はこの身体を想像して、ずっと先生のことを慕っていたんだわ」

 と感じるようになっていた。

 先生の方でもそうだったようで、

「自分の性していた相手が、たまたま生徒だったというだけのことだ」

 と、まるで教師であることを自分から放棄するかのような感情であった。

 あれだけ、生徒との間のことを気にしていたはずなのに、今では、

「教師と生徒だから何だっていうんだ。愛し合っていれば関係ないじゃないか」

 と思うようになっていた。

 そのために、職を失おうが、先生にとって、それほど重要なことではないと思えたのだ。自分が教師になったのは、

「ひなたに出会うためだった」

 と思えば、目的が達成できたので、教師でなくなったとしても、後悔はないと思うのだった。

 あくまでも、自分中心の考え方なのだろうが、相手のひなたも同じことを思ってくれているのであれば、これ以上幸せなことはないと思うのだった。

 先生と生徒という関係を一歩超えてしまうと、そこは二人だけの世界。誰にも入り込むことのできない世界であり、誰が何と言おうと引き離すことはできないと思うのだった。

 ひなたの方では、もしバレてしまった時には、先生と駆け落ちをしてもいいという覚悟は持っていた。

「どうせ、家族は崩壊寸前なんだ」

 と家族に未練もないし、学校にも未練はない。

 先生と会えなくなること、それだけが、辛いことだったのだ。

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